文化の継承と革新

SUSTAINABILITY

文化・伝統事業への貢献

1904年、三越は株式会社設立に際して、お客さまやお取組先への挨拶状で日本初の百貨店の始まりを宣言します。1905年1月2日には、全国の主要新聞紙上で「デパートメントストア宣言」を発表、全てのステークホルダーに対して、百貨店誕生とともに、文化の振興を宣言し、ここから日本における百貨店文化の創造が始まりました。
2023年、三越は創業350周年を迎えました。創業からの精神を引き継ぎ「伝統を越える革新性」をテーマに、文化・伝統の振興・継承に貢献するさまざまな取り組みを行っています。

三越の礎を築いた創業者・三井高利の功績を振り返る

創業350周年企画の第1弾として、三越の創業者・三井高利の生誕の地である三重県の名産品や工芸品をご紹介する「第66回三重展」を開催しました。会場では「松阪出身の大商人・三井高利の功績」と題して、松阪市と三越伊勢丹ホールディングスの所蔵史料を特別展示。店頭販売・現金決済・正札販売を基本とし、当時の商慣習を覆した商法「店前現銀掛値(たなさきげんきんかけね)なし」が刻まれた看板を精巧に再現した実物大のレプリカもご用意しました。
「越後屋図 京都三越呉服店蔵」「御先祖御肖像 三井高利夫妻」の掛け軸や浮世絵なども展示し、当時の様子を間近で体感したお客さまからは「歴史に触れられる貴重な展示物をこんなに近くで見ることができてうれしい」「当時の様子がよく分かるすばらしい展示内容だった」などの言葉をいただきました。
今後も、お客さまのライフスタイルをより豊かなものにするため、歴史・文化のすばらしさを伝える取り組みを継続的に行っていきます。

御先祖御肖像 三井高利夫妻
越後屋時代の看板を精巧に再現した実物大のレプリカ(右)を設置したフォトスポット

明治から現代まで、時代をまとう歌舞伎衣裳の変遷をご紹介

三越は、1907(明治40)年に三越衣裳部を新設。昭和初期にかけて歌舞伎公演の貸衣裳業を行い、歌舞伎の発展に貢献してきました。当時制作された歌舞伎衣裳の一部は、現在も三越伊勢丹ホールディングスの史料室で所蔵しています。
2023年7月、三越創業350周年企画の一つとして「歌舞伎衣裳展」を開催しました。何十年も前に役者が身にまとっていた衣裳を間近でご覧いただくにあたり、現在の歌舞伎舞台を彩る松竹衣裳(株)と協業し、新旧衣裳を比較しながら当時の空気を伝える趣向を凝らした展示にしました。「助六由縁江戸桜」髭の意休役や「藤娘」藤の精役など、同じ配役の衣裳でも制作する時代によって、使用する素材・染料・図柄の表現・サイズ感が異なり、多くのお客さまが大変興味深くご覧になっていました。

新旧歌舞伎衣裳16着を特別展示
昭和初期(左)と現代(右)の新旧歌舞伎衣裳を比較展示
三越の歴代ポスター約20点を特別展示

松竹衣裳(株)の皆さまからも「昭和初期の斬新な衣裳を見ることができて、私たちも勉強になった」と喜びの声をいただいています。
また、会場では1896(明治29)年以降の「三越歴代ポスター展」も同時開催。写実的和服美人画を描いた歴代ポスターや、三越の専属図案家だった杉浦非水氏によるPR誌の表紙など、当時の流行や三越の歩みを映し出した作品をご紹介しました。
これまで三越伊勢丹グループが350年守り続けてきた文化への貢献を礎に、今後も百貨店から文化を創造することを目指していきます。

パイプオルガンの重厚な音色を100年先まで届ける

三越日本橋本店本館2階中央ホールのバルコニーに設置したパイプオルガンは、三越の文化の象徴として、90年以上もの長きにわたり、店内に重厚な音色を響かせてきました。
三越日本橋本店の本館は、「わが国の百貨店の歴史を象徴する」ものとして、2016年5月に国の重要文化財に指定され、パイプオルガンは2009年に中央区民有形文化財に登録されました。文化・芸術を発信する唯一無二の空間として、長くお客さまから親しまれています。
修復を重ねながら演奏を続けてきたパイプオルガンは、音が出ない鍵盤が増えるなど、老朽化が進みました。これからの100年先に引き継いでいくために、2023年2月より演奏を休止し、およそ半年をかけて大規模な修復を行いました。既存の機体や装置を極力残しつつ、清掃・回収・修理が必要な部材を外し、店内や専門事業者の工房にて丁寧に進行し、9月に修復を終えました。
演奏再開を記念して、特別演奏会を開催。未来を担う日本橋中学校吹奏楽部(総勢30人)の皆さまとコラボレーションし、甦ったパイプオルガンの特別な演奏で、来場された多くのお客さまを魅了しました。演奏を聴かれたお客さまからは「演奏再開を楽しみに待っていました」「すばらしい演奏に心が打たれました」など感謝の言葉をたくさんいただき、演奏を終えた学生の皆さまからは、自信に満ちた笑顔があふれていました。
これからも、「伝統を越える革新性」を追求し、お客さまの豊かな生活文化につながる取り組みを進めていきます。

日本橋三越本店 本館2階中央ホールのバルコニー
パイプオルガン演奏再開を記念した特別演奏会の様子

優れた技と美を保護・育成し続ける「日本伝統工芸展」

三越伊勢丹グループの文化展の歴史は、1904(明治37)年に三越日本橋本店で開催した「光琳遺品展覧会」に始まります。この展覧会は、モノを売るだけにとどまらず、日本の文化、特に芸術を誰もが自由に楽しむことを近代百貨店の使命の一つに据えた、日本独自の文化の創造を目指したものでした。
「日本伝統工芸展」は、日本の優れた伝統工芸の保護と育成を目的に、(公社)日本工芸会が毎年開催する日本工芸の技と美が集結する公募展です。三越日本橋本店で「第1回無形文化財日本伝統工芸展」を開催してから、今年は節目の70回目を迎えました。会場では、陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸7部門の一般公募作品から選ばれた入選作の展示や、重要無形文化財保持者の最新作などを紹介。また、第70回を記念して各部門を代表する作家22人による過去の作品の特別展示販売を行いました。同時に、三越伊勢丹ホールディングスが所蔵する、昭和天皇・皇后両陛下の行幸啓、日本工芸会初代総裁の高松宮宣仁親王殿下をお迎えした当時の写真パネルも展示しました。
変革を続ける社会のなかで、日本伝統工芸展などの取り組みを通じて、伝統工芸技術の持続的な発展につなげています。

第70回を記念して、本館1階中央ホールで行った特別展示販売の様子

「ときめき、つづく。」―地域と共創をもって文化伝統を継承

2023年、仙台三越は開店90周年を迎えました。戦災や震災を経ながら、地域の方々と共にまちの復興、発展に取り組んできました。「ときめき、つづく。」をテーマに歴史的な文化・伝統の継承にも取り組み、過去から未来へと続くストーリーを紡ぎます。
4年ぶりに通常開催された5月の「仙台・青葉まつり」では、仙台発祥の伝統芸能「仙台すずめ踊り」に、お取組先を含む従業員約30人が参加しました。

「すずめ踊り」に参加した仙台三越のメンバー

参加者は揃いの衣装に身を包み、すずめの羽に見立てた扇子を手に軽やかに踊りました。原点回帰と百貨店らしさを追求し、3月には、仙台出身で世界各地で活躍するタップダンサーの熊谷和徳氏とセッションし、まちを盛り上げました。まちゆく方々からは「なんだか三越さん面白いね!」「仙台らしい素敵なイベントだね」といった温かい声や、「すごくがんばって踊っていて感激しました」「久しぶりに商店街がにぎわっていて良かったです」といった感謝の言葉もいただきました。

仙台三越定禅寺通り館の壁に掲出したお祝いのメッセージ

開店90周年に際して、共に地域活性化に取り組む小売業他社さまからいただいたお祝いメッセージをウィンドウに掲出しました。市内百貨店さまの「ともに、これからも、ここで。」から始まるメッセージは、SNSを中心に特に多くの反響をいただきました。
今後も地域の方々と共創し、地域文化・伝統の発展に一層貢献していきます。

国立博物館・美術館との協業

日本が世界に誇る文化財を守り、未来へと守り継ぐことを目的に、パッケージに国立博物館・美術館の所蔵作品を使用した日本の美意識あふれる特別なギフトを、中元、歳暮の商品として販売しています。商品代金の一部は、その作品を所蔵している博物館・美術館の運営に役立てられます。

コラボレーション先

  • 東京国立博物館(2016年~)
  • 京都・奈良・九州国立博物館(2018年~)
  • 東京国立近代美術館(2020年~)
  • 京都国立近代美術館(2023年〜)

物産展や外国展の開催

1956年「パリー展」会場の様子

三越伊勢丹グループでは美術展や文化展のほかに、人と地域をつなぐ取り組みの一環として、物産展や外国展も開催。人の想いや感性に触れ合える場所づくりのほか、各地域の文化や伝統、名産品まで幅広くご紹介しています。物産展の歴史はとても古く、1917年に日本で初めて開催した「東北名産品陳列会」を皮切りに、現在まで70回以上も続いている「全国銘菓展」や「洛趣展」など、日本中から選りすぐりの食や工芸などを集めた催事を数多く行っています。また、1956年には戦後初の外国展として、流行の中心地からモードなアイテムをご紹介する「パリー展」を開催。その後1965年にスタートした「英国展」など、どれも長きにわたりお客さまから愛され、より豊かなライフスタイルの実現に貢献しています。
“伝統と伝承”をテーマにした「日本の職人 匠の技展」も、20年以上続く人気催事です。先人たちの技を継承しながら、歴史あるものを、現代の暮らしに馴染むよう昇華させることを推進しています。同時に、若い世代のお客さまにもご覧いただくことで、伝統工芸の持続的な発展にもつなげています。

養蚕農家や国産絹糸の維持を目的とした、純国産絹「三煌」を開発

近年、国内産シルクのシェアは、日本で消費される絹量の1%にも満たないと言われています。そこで呉服店を起源とする三越伊勢丹グループでは、養蚕農家や国産絹糸の維持を目的に、養蚕から製糸、製織まですべて国内生産にこだわった純国産絹を、10年以上もの歳月をかけて開発しました。
お客さまから寄せられた「シワになりにくい着物が欲しい」「昔の着物の方がしなやかな肌触りで風合いが良かった」という声にお応えして、蚕の品種改良を行うところからスタート。通常の蚕が吐き出すものより80%も細い糸からつくり出された絹糸は、養蚕農家、製糸製織小売、お客さまの三者が煌き続けることを願い「三煌」と命名しました。優雅な光沢としなやかな質感、そして発色の良さが特徴の生地は、色無地から多色使いの振袖まで、さまざまな着物に用いられています。日本の絹文化を次世代につなぐため、今後は洋服など幅広いアイテムへの活用を目指しています。

純国産の繭の選繭と、繰糸の工程
美しい色合いは、作家とお客さまの双方から好評

新たな文化の創造

三越伊勢丹グループは、既成概念にとらわれず、豊かな暮らしや文化の振興、多様な価値を楽しめる社会の創造といったお客さまの関心ごとを革新的に提案し続け、2023年に創業から350年を迎えました。「伝統は革新からしか生まれない」という創業以来の精神を継承し、今後も、これまで培われてきた文化や伝統をあたらしい手法を駆使しながら、次世代へつなげる取組を積極的に行っていきます。

ショッピングバッグで文化をつなぐ

のれんのアイコンとしてお客さまにご愛顧いただいている三越伊勢丹グループのショッピングバッグ。それぞれのデザインは、歴史に裏打ちされた、文化を伝えるアイテムとして、三越伊勢丹グループの精神をも表現しています。

世界にひとつのタータンとともに。文化をつなぐ伊勢丹のショッピングバッグ

伊勢丹のショッピングバッグ、マクミラン/イセタン(左)とブラックウオッチ/イセタンメンズ(右)

伊勢丹のショッピングバッグの歴史は1956年に伊勢丹新宿店にティーンエイジャーショップが誕生したことに遡ります。お品物を包装紙に包んでお渡しするのが一般的であった時代にショッピングバッグを採用、その後、当時人気のあったタータンを柄として使用してきました。
長年に渡り、タータンのプロモーションに貢献したとして、2012年にスコットランド・タータン協会から『タータン・アワード』を授与されます。それを機に、スコットランドの伝統文化である、タータンの原点に立ち返り、伊勢丹オリジナルの生地を織り上げました。糸の色や本数までも規定されたそのタータンを『マクミラン/イセタン』と名付け、全世界のタータンを一括統制するためスコットランドが国として管理している機関、スコットランド・タータン登記所に登録、2013年にショッピングバッグの柄として使用を開始しました
また、紳士部門の『ブラックウオッチ/イセタンメンズ』についても同様に、2014年に登録、2015年からショッピングバッグとして使用しています。
2023年には、スコットランドのヴィクトリアン&アルバート ダンディー博物館で開催された展覧会『タータン展』において、タータンのデザイン・インスピレーションの好例として伊勢丹のショッピングバッグが展示されました。

2012年にスコットランド・タータン協会から授与された『タータン・アワード』
スコットランド・タータン登記所の登録証、マクミラン/イセタン(左)ブラックウオッチ/イセタンメンズ(右)

自由のシンボル、友禅とともに。日本の技をつなぐ三越のショッピングバッグ

三越のショッピングバッグ、実り。表と裏で表情が異なる
友禅訪問着「白地位相割付文 実り」。ショッピングバッグの基となるデザイン

三越のショッピングバッグ『実り』は、デパートメントストア宣言から110年を迎えた2014年に誕生しました。呉服屋として創業した三越の原点「日本の染と織」。その原点を大切に、三越の未来のシンボルとして、重要無形文化財保持者(人間国宝)森口邦彦氏によりデザインされました。
三越の前身である越後屋創業と時を同じくして、織物中心の当時のファッションに自由な表現を与えた染、友禅が登場します。江戸の街は友禅をはじめとした「染で描く文様」が流行の中心となり、町人たちが文様で遊ぶ高度な生活様式が確立されたと言われています。森口氏の、伝統的な友禅の技法を用いながら、既成の概念を超えた斬新なデザインは、まさに、町人たちが愛した文様による遊びそのものです。その美意識が、きものという枠を超えて、ショッピングバッグを通じて日常へと広がっていきます。

アイヌ文様とともに。北海道への愛と文化をつなぐ丸井今井のショッピングバッグ

丸井今井のショッピングバッグ

丸井今井は戦前、アイヌ文化に詳しい専門家の助言を得て郷土の文化財の重要さを知り、アイヌ民族の文化・生活にかかわる貴重な資料が道内から散逸するのを防ぐために数多くの資料を収集、札幌本店内に設けた北海道郷土室で1948年から展示を行いました。その後、1960年に札幌時計台内に郷土室を開設するにあたり、丸井今井の展示品を全て札幌市に寄贈、現在は国立アイヌ民族博物館等でも貴重な資料として活用されています。
1872年の創業以来、150年に渡り北海道の百貨店として営業してきた丸井今井は、世界に通じる創造性を持つ、伝統的なアイヌ文様を2017年にショッピングバッグのモチーフとしました。アイヌ文様は愛する人を守るための魔除けとして衣服に刺繍されます。ハートの形に見える文様は、お客さまへの「愛(こころ)」を表現しています。
この土地の文化的象徴としてアイヌ文様に目を向け、過去から未来へと、新たな物語を紡いでいます。

近代抽象画とともに。多様性をつなぐ岩田屋のショッピングバッグ

岩田屋のショッピングバッグ
岩田屋の包装紙をデザインした岡田謙三氏

岩田屋は1959年皇太子(現上皇陛下)のご成婚を記念し、洋画家の岡田謙三氏に包装紙のデザインを依頼しました。日本的な色彩感覚や自然観、伝統芸術への理解と共感に裏打ちされた抽象表現で海外でも高く評価された岡田氏は、この包装紙で、風土・建物・和服・日用品などをモチーフとし、岩田屋のもつ新時代の感覚や、堅実な店であることを表現しています。1969年よりこのモチーフをショッピングバッグの一部に取り入れ(当時は柄が黒色)、1981年には現在のデザインに統一され今日まで使い続けています。
このショッピングバッグの一部は、岩田屋三越の特例子会社である、株式会社 愛生の従業員によってひとつひとつ手づくりされています。大きな紙を立体的に丁寧に折る作業はとても根気が必要ですが、ひとつひとつ大切に、気持ちを込めて作られたショッピングバッグは、個々の多様性を尊重することの大切さを教えてくれます。

障がいのある方が自立・社会復帰への一助となることを目的として設立された特例子会社

次世代支援・育成

文化や伝統を振興・継承していくためには、次世代の支援や育成が欠かせません。これからの担い手となる学生や若きアーティストへの支援・育成についてご紹介します。

三越の包装紙「華ひらく」から、日本独自の文化やデザインの力を次世代に継承

札幌市内の小学生によるオリジナルの「華ひらく」

三越は、2023年に創業350周年を迎え、多くの方々から注目されています。三越伊勢丹PR担当内で「351年目以降にもつながる、カタチに残るPR手法」について、さまざまなアイデアを出し、議論を重ねました。
PR担当の役割は、外部メディアを通して多くの方に三越伊勢丹を知っていただき、企業価値を高めることです。メディアにとって報道価値が高い要素は何かを考え、PR効果とともに社会貢献活動につながる企画を行うことにたどり着きました。そこで、三越の店舗がある地域の小学校や特別支援学校などと協働し、三越の包装紙「華ひらく」を通して、日本独自の文化である“包む”と“デザインの力”を学ぶ「みんなでつくる華ひらく 共創包装紙教育プログラム」を企画しました。三越伊勢丹のロゴやビジュアルを管理しているチームなど、多くの部署と連携しながら企画を実現させました。
「華ひらく」は、1950年に画家の猪熊弦一郎氏によってデザインされた、日本の百貨店初となるオリジナルの包装紙です。猪熊氏が千葉の犬吠埼を散策中、海岸で波に洗われる石を見て「波にも負けずに頑固で強く」をテーマにしようと考えたことから、このデザインが生まれました。以来、三越のシンボルとして愛されています。

本プログラムを通して、子どもたちに伝えたい3つの軸を掲げました。

  1. 日本文化(相手を慮る様式美)
  2. 自然の持つ美しさや力強さ
  3. 身近な包装紙を題材にデザインを知るきっかけを得る
岡本健氏による講義

2023年6月、三越銀座店がある東京・中央区の京橋築地小学校を皮切りに、本プログラムがスタート。9月までに、三越銀座店・福岡三越・高松三越・札幌三越・三越日本橋本店・名古屋三越の主催で順次開催しました。
本プログラムでは、外部講師としてグラフィックデザイナーの岡本健氏を招き「包む」ことが持つ意味や「自然の造形美」「デザインの力」についての講義を実施。三越伊勢丹の社員による“ななめ包み”のデモンストレーションも行い、慶事・弔事によって包み分けすることで、相手を慮る気持ちを表していることなども学んでいただきました。

また、グループワークでは「華ひらく」モチーフの背景を活かし、「自分が思う自然の美しいカタチ」をモチーフにオリジナルの包装紙を制作。思い思いの形に色紙を切り抜き、台紙に貼り付けながら、グループごとの「華ひらく」を完成させました。
小学生の皆さんがデザインしたオリジナルの「華ひらく」は、本物の「華ひらく」と同じ紙・インクで印刷され、三越の店頭で実際に品物を包みます。飾られるアートではなく、お客さまの想いを包むアートを子どもたちとの共創をもって形にし、日本独自の文化・芸術を未来に引き継いでいきます。

香川大学教育学部附属高松小学校4年白組の生徒に包装を実演
中央区立京橋築地小学校5年生のグループワーク

アンティークバイオリンを通じた、アーティスト支援

2022年より外商統括部では、お客さまにアンティークバイオリンのオーナーになっていただき、次世代のアーティストに楽器を貸与する取り組みを行っています。

インターンシップで次世代育成を行う「レオテックス」

グループ会社の(株)レオテックスでは、75年にわたり自社工場や百貨店内の補整加工室にて高度な縫製技術を磨くことで、お客さまからの信頼とご支持をいただいてきました。
次世代育成にも力を注いでおり、2015年より文化服装学院からインターンシップ生を受け入れています。2023年は、2日間の研修を3回実施し、三越日本橋本店、伊勢丹新宿本店、三越銀座店の店内と補整加工室の見学、そしてインターンシップを経て入社した社員の指導のもと、実技研修が行われました。
参加した学生からは「お客さまのご要望とご期待を超えられる仕上がりを意識しながら、丁寧に作業することが大切だと実感した」「あこがれであるブランドの生地に触れることができて、とてもうれしかった」とのお声をいただいています。
また、先輩社員から「日々の仕事を通じて、1対1でテクニックや知識を学んでいる」「社内のカリキュラムが確立されている」「スキルを要する難しい仕事にも挑戦できる」など生の声を聞くことで、就職した後の自身のキャリアについてイメージを膨らませていました。
このように学生と接する機会は、新たな感性や視点を体感するとともに、技術継承における指導方法などの改善につながっています。これまで当社に11人が入社しておりますが、今後もインターンシップを通して、新たな人財の獲得・育成に取り組むとともに、学生が自己の職業適性や将来設計について考える機会を提供していきます。

インターンシップ生研修時の様子

新しい日本画に挑戦「三越伊勢丹・千住博日本画大賞」

日本画壇の発表の場として歴史を重ねてきた三越日本橋本店を舞台に、いま一度“日本画とは何か?”を問い直し、未来へ向けた日本画の在り方そのものを見つめる「三越伊勢丹・千住博日本画大賞」。2020年にスタートし、2022年8月に2回目を開催しました。従来の画材である岩絵具を必須としない、新しい日本画に挑戦する作品を公募。世界的アーティスト千住博氏を審査委員長に迎え、厳正な審査を通過した20点は、日本画壇を代表する横山大観、平山郁夫などが作品を展覧した、三越日本橋本店美術特選画廊にて紹介されました。今後も三越伊勢丹では、将来の美術界で活躍する作家を発掘し、広く発信していきます。

授賞式の様子

現代アートに特化した「三越コンテンポラリーギャラリー」

2021年開催の伊藤彩「Where is banana?」

文化・芸術の振興に長年取り組んできた三越伊勢丹グループは、今後100年先にも受け継がれていくような、本物のアートを取り扱っていくことが使命であると考えています。三越日本橋本店では、既存ギャラリーでご紹介している絵画や彫刻、陶芸などに加えて、より一層日本の美術を幅広く網羅するため、現代アートにフォーカスした「三越コンテンポラリーギャラリー」を2020年3月に新設しました。先駆者たちが切り拓いてきた美術の歴史へ敬意を払いつつ、時代に即した新しい価値観をつくり出す現代アートを発信しています。
「三越コンテンポラリーギャラリー」では、東京藝術大学などを卒業した現代アートに秀でた社員も活躍。自らもアーティスト活動をしていることを活かし、作家の想いが伝わる環境づくりや、作品に込められたコンセプトをお客さまにお伝えして興味を持っていただくなど、さらなるアート市場の活性化に貢献しています。

クリエーターとの協業事業「三越伊勢丹メディア芸術」

©尾田栄一郎/2022「ワンピース」製作委員会

現在、国内外から注目を集める日本のマンガ・アニメーション・映画・ゲーム。これらは文化芸術基本法 第9条で「メディア芸術」として定義されています。
三越伊勢丹グループでは、これまで文化振興やクリエーター育成に取り組んできた実績を活かし、「三越伊勢丹メディア芸術」を新たに事業化しました。メディア芸術の優れた作品やクリエーターと協業し、様々な企画を実施しています。
2022年8月には、劇場版『ONE PIECE FILM RED』とコラボレーションした『ONE PIECE FILM RED』×伊勢丹を、伊勢丹新宿本店と三越伊勢丹オンラインストア、オンラインギフトサイト「ムードマーク バイ イセタン」で開催しました。これからも、メディア芸術の魅力やオリジナル企画をご紹介していきます。

未来のクリエーター育成に、体験実習の場を提供

三越伊勢丹グループでは、産学協同による“未来のクリエーター育成”も支援しています。
2022年で7回目を迎える東京デザイン専門学校との取り組みでは、体験型実学教育の場として伊勢丹新宿本店を提供しました。今回は“ハロウィン”をテーマに、学生自らがデザインコンセプトやプランニング、プレゼンテーションを実践。施工会社など多くの人たちと関わりながら、自分たちのアイデアが立体的につくられていく様子を学びました。できあがった作品は、2022年9月28日~10月31日の期間、伊勢丹新宿店本館地下1階ショーウインドー10面にディスプレイ。学生ならではの独創的な視点でつくられたストーリー仕立ての演出は、会期中多くのお客さまから注目を集めていました。
今回のプロジェクトに参加した学生からは「皆と同じ目標に向かって協力する、かけがえのない時間を過ごすことができた」「社会と関わる貴重な経験ができた」と喜びの声をいただいています。今後も次世代のクリエーターに向けて、ゼロからものづくりをする大変さや、試行錯誤しながらより良いものをつくり上げる楽しさを経験できる場の提供をしていきます。

MITSUKOSHI×東京藝術大学 夏の芸術祭2020 次代を担う若手作家作品展

「MITSUKOSHI×東京藝術大学 夏の芸術祭」は、お客さまに身近な環境でアートを感じていただくとともに、若手のアーティストに発表の場を提供する、次世代育成につながる取り組みです。2020年8月で6回目の開催となりました。
「I LOVE YOU」をテーマに、日本画・油画・彫刻・工芸・デザイン・建築・先端芸術表現・美術教育・文化財保存学の9部門の現役教授陣がご推薦の、多様性社会に生きるアーティストとして若き才能が表現した作品をご紹介しました。

40歳未満の大学院在学生および卒業生約90名