SUSTAINABILITY
個客業への変革と進化に向けて
執行役 代表執行役社長 CEO
細谷 敏幸
私たち三越伊勢丹グループには、三越、伊勢丹、岩田屋、丸井今井という4つののれんが築き上げてきた長い歴史と企業文化があります。いずれののれんにおいても「お客さま第一」の精神を胸に、時代の変化に対応しながらも、お客さまのご要望に先んじた提案を行ってきました。これからも時代の変化とともに、人々の豊かな暮らしに向けて価値を創出し続けることこそが三越伊勢丹グループの使命だと考えています。
このたび、2025年度から2030年度までの6ヶ年の中期経営計画を発表しました。この計画の核心は、三越伊勢丹のビジネスモデルを個客業へ転換することです。これは時代の変化やデジタル化の急速な進展により、お客さまの購買行動や価値観が大きく変わり、百貨店の旧来型の“館”業のままでは、持続的な企業経営が難しいという考えに対する私たちの答えです。一律の「マスマーケティング」から「個のマーケティング」へと転換し、お客さまお一人お一人に対し、より細やかに高感度上質な価値を提供するために、より多くのお客さまとより深くつながることを目指しています。エムアイカード保有のお客さまに加え、エムアイカードをお持ちでないお客さまでも三越伊勢丹アプリを持っていただくことで、個々のご要望にマッチしたサービスを提供できる仕組みづくりを進めています。現在、当社グループとつながっているお客さまは700万人を超えております。なお、この取り組みは国内のお客さまだけでなく、海外からのお客さまともつながっていくことを視野に入れています。このように、グループ全社一丸となって、個客業への転換の土台づくりを精力的に進めているところです。
さらに、私たちは中期経営計画における各戦略を進めながら、喫緊の世界的課題である気候変動をはじめ、人権問題などの社会課題に対しても、真摯に向き合っていきます。2021年に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明し、以降それに基づく情報開示をしております。2023年3月には、「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」の理念に賛同、署名し、同年4月にグループの「人権方針」「調達方針」を改訂しました。また、同年6月には「お取組先行動規範」を新たに制定するなど、UNGCが提唱する人権・労働・環境・腐敗防止の4分野に関する10原則にのっとった活動を様々な形で実施しています。今後もグローバルな視野を持つことで、世界共通の目標の実現に向けて、より一層の貢献をし続けてまいります。
サステナビリティ経営について、私は次のように捉えております。約1万7,000人の従業員と多くのお客さま、国内外の百貨店店舗、関連会社などを最大限に活用し、社会課題に対し事業活動を通じて解決していくこと、そしてその結果得た利益を経営資本に再投資し、次の社会課題の解決へと結びつけていくことです。
取り組みの実効性を高めるべく、2021年度からは私を議長とした「サステナビリティ推進会議」を年2回開催し、各取り組みの進捗確認のほか、ESG関連の最新動向や環境の変化を踏まえ、中長期の方向性について議論しています。また、総務・人事を統括している執行役常務を議長とする「サステナビリティ推進部会」を設置し、6つのワーキンググループの運営を通じたグループ全体のサステナビリティ活動の推進を行っています。
サステナビリティ経営の循環を続けていく指針として、2018年度に3つの重点取り組み(マテリアリティ)の特定を行いました。その後、外部環境の変化、ステークホルダーの皆さまからの声、そして企業理念の再整理などを踏まえ、2023年度にあらためて重点取り組み(マテリアリティ)の見直しを行いました。本業を活かして取り組むことができる課題であるか、当社グループが成果を上げられる課題であるか、といった観点で、企業理念とも照らし合わせながら、「人・地域をつなぐ」「持続可能な環境・社会をつなぐ」「ひとの力の最大化」「グループガバナンス・コミュニケーション」の4つに特定し直しました。この4つのマテリアリティに取り組みながら、社会的責任を果たすことにとどまらず、お客さまの暮らしの豊かさにつながるあたらしい価値を生み出すことに、注力してまいります。
今、私たちが直面している社会課題は高度化しているだけでなく、複雑化し、多面的な取り組みが必要になってきております。私たちの事業活動が社会全体に与える影響を評価し、取り組みをより一層進化させていくことが重要です。このような社会環境のなかで、私たち三越伊勢丹グループは、小売業を中核とした事業の特性を活かし、商品の提供だけでなく、文化や芸術の振興、地域の活性化を通じた社会貢献をこれからもより強力に推進してまいります。これらの活動を通じて、私たちは地域社会と一体となり、より豊かで持続可能な社会の実現に寄与してまいります。
さらに、私たちは様々なステークホルダーの皆さまとの対話を今後も深めていきます。対話を通じて多面的な視点を持つことで、複雑化する社会課題への理解を深め、より適切な解決策を見つけることができます。その結果、私たちの事業活動が全体としてどのような影響を与えているのかを評価することが可能となります。
今後も私たちが目指している姿が、社会課題の解決やより良い社会の実現につながると強く信じて、そして、その実現に向けては、性別や属性を問わずグループの「ひとの力」を最大化し続けることで、サステナビリティ経営に、全力で取り組んでまいります。今後も皆さまからのご支援とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
取締役 代表執行役社長 CEO
細谷 敏幸
2025年4月1日