SUSTAINABILITY
三越伊勢丹グループは、長期に目指す姿「お客さまの暮らしを豊かにする、“特別な”百貨店を中核とした小売グループ」を実現するため、事業活動を通じたサステナビリティ経営に取り組んでいます。
当社グループのあらゆる事業活動から影響を受けるすべての人々の人権を尊重し、企業としての責任を果たすため、2018年度に「三越伊勢丹グループ人権方針」を制定し、2023年度に改訂いたしました。本方針には、国際規範およびガイドラインに基づいた、当社グループとしての姿勢や基本的な考え方をまとめるとともに、昨今の社会的な潮流・情勢を踏まえ、個別の人権課題への取り組みを約束しています。
サプライチェーン全体で人権の尊重を実践するため、当社グループは元より、お取組先やその調達先にも本方針および「お取組先行動規範」のご理解と実践をお願いしております。サプライチェーンの皆さまと共に、持続可能な社会の実現を目指して取り組んでまいります。
当社グループでは、全社で人権課題や環境課題に配慮した持続可能なサプライチェーンの構築を目指し、人権デュー・ディリジェンスに取り組んでいます。
多くのお取組先にご協力いただき、サプライチェーン全体のリスクの特定と評価を行っています。
2021年度に中核事業である百貨店事業を中心に、当社グループの売上上位約7割を占めるお取組先およびその他事業や後方部門の主要お取組先に対して「サステナビリティ調達に関するアンケート」を実施し、292社・グループ(回答率51%)よりご回答をいただきました。アンケート結果からは、とりわけ雇用、不当労働、労働安全衛生などの人権課題が懸念されたものの、お取組先の業種・規模が様々であることから、更なる深掘り調査として、2023年度より計約600社のお取組先との個別対話を実施しました。加えて、2023年11月から2024年2月にかけて追加のアンケート調査を実施し、約2700社より回答いただき、リスクマップの作成などに役立てています。
2023年度に実施したアンケート調査の結果概要は以下よりご確認いただけます。
これらのアンケートと対話の結果を分析し、外部の専門家へのヒアリングを踏まえて特に優先すべき人権課題の特定を進めています。
三越伊勢丹グループの存在意義(ミッション)に“こころ動かす、ひとの力で。”とある通り、当社グループにとって従業員一人一人の“ひとの力”こそが財産であると考えております。また、目指す姿(ビジョン)の“ひとの力”を最大化するためには、「安心して働くことのできる職場環境」の実現が不可欠であり、その実現のために、「適正な労働時間管理」と「ハラスメント・ゼロ」に重点的に取り組んでいます。
2023年6月に会社とグループ労働組合が共同で宣言を発信しました。この労使共同宣言では、「適正な労働時間管理」と「ハラスメント・ゼロ」それぞれに関する具体的な行動指針を示しています。
また、労使共同宣言発信のほかにも、「適正な労働時間管理」の啓発ポスターの掲出や、全役員、全従業員を対象にしたeラーニングの実施などにも取り組み、「安心して働くことのできる職場環境づくり」を目指しています。
人権リスクを防止・軽減するために従業員への啓発を行うとともに、同様の取り組みをお取組先にも要請しています。
年に1度「従業員エンゲージメント調査」を実施し、従業員の働きがいと働きやすさに関する状況の確認を行っております。
調査の中では、心理的安全性(風通しのよさ)やハラスメントに関する職場の状況を問う設問が含まれています。
また、組織のストレス状態を捉える機会として、年に1度、グループ全体でストレスチェックを実施しています。
本人への結果通知はもとより、管理職には組織の調査結果をフィードバックすることで、組織改善に結びつけています。
お取組先および調達先に遵守をお願いしている「お取組先行動規範」の実践状況を確認するため、定期的にお取組先へのアンケート調査を実施しています。また、お取組先が抱える要望や当社グループへの要望を把握するため、個別対話も併せて実施し、お取組先との多面的なコミュニケーションにより人権尊重の実態把握と意識醸成を日々行っております。
人権尊重の取り組みやその結果について、当社のウェブサイトおよびサステナビリティレポートなどで情報開示を行っております。
苦情処理メカニズムについては、店舗で働くお取組先の従業員までを対象としたホットラインを設置しています。
国連が提唱する「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた「ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)」に正会員として加盟しています。この救済窓口を通じて、サプライチェーンに関わるすべての関係者から、人権に関する苦情や報告を受け付けています。
苦情を第三者の窓口で受け付けることで、公平で透明な処理を実現し、より多くの対話や問題解決を促進します。また、通報者の匿名性や通報内容の秘密はしっかりと守られます。
人権デュー・ディリジェンスは一度実施して終わりではなく、繰り返し継続して実施していくことが重要な活動です。今後も、お取組先の皆さまと連携しながらこれらの取り組みの精度を向上させ、持続可能なサプライチェーンの実現に向けた取り組みを推進していきます。
当社グループを取り巻く人権リスクは、当社従業員にとどまらず、お取組先の従業員、お客さま、地域住民などあらゆるステークホルダーに影響を与えます。深刻な人権リスクがサプライチェーン上に存在する可能性について、リスクマップなどにより常に意識し、対応していくことで、人権リスクの是正・防止につなげる必要があります。
当社グループは、お取組先アンケートや対話をもとに、人権リスクを発生可能性と深刻度でマッピングしたリスクマップを作成しました。高リスクと特定された人権課題については、リスク低減に向けた取り組みを推進し、また人権に関する状況は常に変化することを認識し、今後も継続的にリスクマップの見直しを実施していきます。
人権リスクは特定して終わりでなく、それに対してどのように防止や是正の取り組みを実行していくかが重要です。当社グループでは、特定したリスクに対して有識者の知見などを取り入れながら、リスクの是正・防止・低減に向けた対応をワーキンググループで議論し、各部門で連携し、取り組みの実効性を高めていきます。