SUSTAINABILITY
気候変動が社会にもたらす影響は、年々増大・深刻化しています。当社グループは、気候変動を重要な経営課題の一つと位置づけ、「三越伊勢丹グループ環境方針」「同 調達方針」のもと、次世代に持続可能な社会を引き継ぐため、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを行っています。また、当社グループは気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)による提言に賛同しています。そのフレームに基づき、ガバナンスやリスク管理体制へと脱炭素社会の実現に向けた取り組みの考慮を組み込むとともに、シナリオ分析を用いて評価したリスクと機会への対応を推進しております。
気候変動を含むサステナビリティに関する事項は、執行役会にて審議・決議を行い、取締役会に報告を行っています。取締役会は、執行役会の報告を受け、取り組みの進捗を監督しています。
執行役会の傘下には、サステナビリティ活動の方向性や進捗の確認を行いグループ全体での浸透・推進を役割とする「サステナビリティ推進会議」を設置し、年に2回開催しています。議長はCEOが務めており、リスクと機会を踏まえたサステナビリティに関する経営判断の最終責任を担っています。
また、「サステナビリティ推進会議」の傘下には、課題別に6つのワーキンググループが設置されています。このうちの一つである「環境ワーキンググループ(CRE戦略室管財部、グループ総務部サステナビリティ推進部により構成)が、グループ各社と連携しながら、具体策の策定・実行を進め、その進捗をサステナビリティ推進会議にて報告しています。
詳しくは、「サステナビリティ推進における体制」をご覧ください。
気候変動という大きな社会課題は、当社のビジネスに様々な影響を与えると考えられます。不確実な中でも将来に向けた意思決定をしていくために、シナリオ分析を用いてリスク・機会を分析いたしました。
なお、分析にあたっては、当社の経営計画と整合する、下記3つの時間軸にて検討を行いました。
規制強化や消費動向の変化を通じて脱炭素社会へと向かっていくことにより移行リスクが強まる一方で、物理的リスクの顕在化可能性が4℃シナリオより相対的に低い世界を想定。
内容 | 種類 | 影響度 | 対策 | ||
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短・中期 | 長期 | ||||
移行リスク | 気候変動対応の遅延・劣後によるお取組先の離反 | 市場 | 中 | 中 | 省エネの推進・再エネ導入等、GHG排出量削減にむけた具体策の実施 |
炭素価格制度の導入によるコスト増※ | 規制 | 20.8億円 | - | ||
環境関連法規制対応等のコスト増 | 規制 | 小 | 中 | 廃棄物の削減や包装資材の使用量抑制など、資源循環施策の強化 | |
当社の脱炭素への取り組みや開示が劣後した場合の、お客さまからのイメージ低下 | 評判 | 中 | 中 | サステナブルな商品・サービスを展開する営業施策(think good、買取・引取サービスのi’m greenなど)の拡大、顧客接点における環境課題への取り組み(包装資材の使用量抑制や、店舗への再エネ導入など) | |
移行機会 | お客さまのサステナビリティ・環境志向の上昇による、イメージ向上 | 市場 | 小 | 中 |
2030年の想定排出量(Scope1・2)に、IEA WEO2024 Net Zero Emissions by 2050 Scenarioで示された炭素価格の値($140/t-CO2)を乗じた。$1=150円にて換算。
脱炭素に向けた政策や技術の変化は起こらず移行リスクの影響が1.5℃シナリオより相対的に低い一方、平均気温の上昇や異常気象の激甚化により物理的リスクが顕在化する世界を想定。
内容 | 種類 | 影響度 | 対策 | ||
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短・中期 | 長期 | ||||
物理的リスク | 台風による営業停止での売上減※1 | 急性 | 1.2億円 | 実店舗以外での、顧客とのタッチポイントの確保 BCPによる自然災害発生時の体制整備 |
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浸水による営業停止での売上減※2 | 急性 | 1.4億円 | 1.6億円 | ||
浸水による資産の減損※2 | 急性 | 1.2億円 | 1.5億円 |
4℃シナリオの影響度(金額)は、いずれも国内百貨店業を対象にて算出。短・中期の時間軸は中期を用いた。
※1台風の増加に起因する追加の売上減を試算。台風の増加による休業増加日数に、休業1日当たりの売上減を乗じた。台風の増加率は、IPCC AR6:SSP5-8.5を参照。
※2100年に一度の河川の洪水や高潮が起きた場合を想定。影響度には、期待値として1/100を乗じた。洪水や高潮による浸水が想定される店舗を、IPCC AR5: RCP8.5、IPCC AR6: SSP3-7.0シナリオに基づき分析。想定浸水深は、国土交通省『治水経済調査マニュアル(案)』を参照。売上減では想定される営業停止日数に1日当たりの売上を、資産の減損では償却資産(土地以外)および在庫に想定被害率を乗じた。
気候変動の緩和を目指す、当社グループの環境目標・長期目標の達成に向けた取り組みに伴う影響を想定。
内容 | 種類 | 影響度 | 対策 | ||
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短・中期 | 長期 | ||||
移行リスク | エネルギーコストの高騰(再エネ調達額を含む)※ | 技術 | 18.2億円 | 60.9億円 | 複数手法による再エネ調達ポートフォリオ組成、省エネの推進 |
カーボンニュートラルに向けた設備投資額等の増加 | 技術 | - | 中 | 省エネの推進、適切なタイミング・手法での設備更新 | |
移行機会 | 省エネによるエネルギーコストの削減 | 市場 | 小 | 中 | 省エネの推進 |
2030年、2050年の想定エネルギー調達額と、2023年時点の調達額の差。想定調達額は、IEA WEO2024 Net Zero Emissions by 2050 Scenarioを含む複数のレポートを参照。
気候変動に関するリスクは、サステナビリティ全般の課題におけるリスクと同様に、組織全体のリスク管理プロセスにも組み込みモニタリングを行っています。詳細は、「サステナビリティ推進会議」において、対応方針等の策定、実行管理を行うことで、リスクマネジメント対策の実現を図っています。
リスク管理に関する詳細は「リスクマネジメント」をご覧ください。
気候変動に関するリスク・機会やその進捗状況を管理するための指標には、Scope1,2,3の温室効果ガス(GHG)排出量を用いています。また、気候変動のリスクと機会をマネジメントするための中期目標としては、Scope1,2排出量および再生可能エネルギー導入比率を使用しています。本環境中期目標の水準がパリ協定と整合していることを明確にするため、SBT(Science Based Targets)認定取得を目指しており、2025年3月にコミットメントを表明しました。
長期の視点では、サプライチェーン全体に関連するリスク・機会を一層考慮していくことが適切なマネジメントにつながるという考えに基づき、2050年を最終年度とする長期目標を掲げています。
2030年 | GHG排出量(Scope1,2) 2023年度比 ▲42% ※Scope2=マーケット基準 |
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再生可能エネルギー導入比率 55% | |
2050年 | GHG排出量(Scope1,2,3) 実質ゼロ |
2030年までは再エネ導入・省エネを中心に、2050年までは、左記に加えて、新技術の活用やお取組先との協業などを通じて目標達成を目指していきます。詳細は、「気候変動への対応」をご覧ください。
温室効果ガス排出量実績値の詳細は、「ESGデータ集(環境)」をご覧ください。