SUSTAINABILITY
豊かな未来と持続可能な社会に向けて
執行役常務 CAO 兼 CRO※
金原 章
チーフ・アドミニストレイティブ・オフィサー、チーフ・リスク・オフィサー
三越伊勢丹グループは、2023年度、全ての企業活動の原点となる「企業理念」を再整理しました。この「企業理念」を実践するための倫理的指針を示した「行動規範」や「サステナビリティ基本方針」などの各種方針に加え、4つの重点取り組み(マテリアリティ)についても見直しました。①「人・地域をつなぐ」②「持続可能な環境・社会をつなぐ」③「ひとの力の最大化」④「グループガバナンス・コミュニケーション」を指針として、サステナビリティ経営を推進しています。この4つの重点取り組み(マテリアリティ)は、当社グループの持続的な成長と持続可能な社会実現への貢献を両立させる羅針盤であり、企業理念の具現化に向けて、具体的な取り組みを進めています。
重点取り組み①「人・地域をつなぐ」では、「多様な価値観の尊重」「地域社会との共創」「文化の継承と革新」を主なテーマとして掲げています。事業活動を行う上でステークホルダーの皆さまとの協力・連携は欠かせません。私たちを取り巻く人々や地域社会との良好なコミュニケーションをもとに、多様な視点から「当社グループだからできること」を考え、グループ全社の従業員一人一人の積極的な参加のもと実践しています。彩りある豊かな未来に向けて「想像力を働かせ、真摯に考えることからスタートする」という想いを込めた“thinkgood”をスローガンにした推進活動は2021年度から2023年度までの累計企画数が2,000件を超え、お客さまの認知度も着実に向上しています。2024年度より取り組みを百貨店事業からグループ全社に拡大し、一丸となって取り組んでいます。
三越は2023年度、創業350周年を迎え、1904年に「デパートメントストア宣言」を行ってから今年で120年になります。文化、伝統、芸術を誰もが自由に楽しむことを百貨店の使命の一つと捉え、事業として取り組むことにより、社会価値と経済価値の両立を図っています。日本の優れた伝統工芸の保護と育成を目的とした公募展「日本伝統工芸展」をはじめ、様々な取り組みを通じて、日本文化の持続的な発展につなげています。
重点取り組み②「持続可能な環境・社会をつなぐ」では、近年の気候変動に伴う災害リスクやサプライチェーンにおける環境・人権リスクなど深刻化している社会課題に対する取り組みです。2050年度の長期目標「温室効果ガス排出量実質ゼロ」に向け新技術を積極的に採用しながら「省エネ」「創エネ」「再エネ」の3つを軸に取り組みを進めています。近年、自然資本や生物多様性などのテーマにおいても、企業が果たすべき役割や情報開示への関心が高まっていますが、このような動向を注視しながら持続的な社会に向けて私たちが取り組むべき事項を引き続き検討していきます。
また、循環型社会構築のために、4R(Refuse、Reduce、Reuse、Recycle)、廃棄物削減などにも取り組んでいます。毎年実施しているお客さまアンケートの結果からもこの分野への関心の高さをうかがうことができ、百貨店を中核とする当社グループらしい取り組みで環境負荷の低減を図りながら、新たなサービスを創造することが必要と捉えています。
持続可能なサプライチェーンの構築に向けて「お取組先行動規範」の理解と浸透を図り、積極的な対話活動を通じてエンゲージメントを強化し、リスクの共有と発生時の早期解決に向けた取り組みを行なっています。さらに、近年高まっている幅広い人権リスクに向き合うための実行プロセスとして、人権デュー・ディリジェンスの枠組みに沿った取り組みを推進しながら、実効性を高めていきます。
重点取り組み③「ひとの力の最大化」では、「個客業への変革」に向けて、企業理念のミッションにもある「ひとの力」、つまり従業員一人一人が持つ意欲や能力こそが、イノベーションを生み出す最大の源泉だと私たちは捉えています。
“個客業”に向けた企業風土改革として、土台となる「対話文化」を通じて、会社、上司、そして主役である従業員が三位一体となった取組みを進めていきます。安心して働くことのできる職場環境の実現のために、2023年度、会社とグループ労働組合が共同で「安心して働くことのできる職場環境づくり」に向けた労使共同宣言を発信しました。今後も全ての従業員や一緒に働く仲間が、安心して働くことのできる職場環境づくりへの投資や、人財育成のための投資を惜しみなく行っていきます。
④「グループガバナンス・コミュニケーション」については、これまでは3つのマテリアリティを支える土台として位置づけていましたが、企業に求められる重要性を踏まえ、4つ目の重点取り組みとして掲げることとしました。ステークホルダーの皆さまとのエンゲージメントを深め、取締役の監督機能、コンプライアンスとリスクマネジメントの両機能の実効性を高めることにより、コーポレート・ガバナンス体制を強化し、揺るぎない信頼の獲得につなげていきます。
この4つのマテリアリティに取り組むことで、社会的責任を果たすにとどまらず、皆さまの暮らしの豊かさにつながるあたらしい価値を生み出すことにこれからも全力で取り組みます。サステナビリティ経営を進めていくには、経営層だけでなく、全従業員がサステナビリティを「自分ごと」として捉え、「サステナビリティは当たり前」という企業風土を醸成することが重要です。サステナビリティの推進と各事業活動のリンケージを図ることで、当社グループならではの強みを通じて、社会価値と経済価値を創出しながら、持続可能な企業の成長へと導きます。
執行役常務 CAO 兼 CRO
金原 章
2025年4月1日