SUSTAINABILITY
三越伊勢丹グループでは、“従業員一人一人の成長”と“会社の成長”を両立させる「生涯CDP」の取り組みを進めています。
この取り組みは、従業員と会社、そしてマネジメントを担う人(上司)が、中長期視点とグループ思考を併せ持ちながら、三位一体で進めていく取り組みです。
上司は、中長期の会社の方向性とグループ全体を正しく理解し、個人の成長を考えながら定期的なキャリア対話を通じて、従業員一人一人の成長機会を公平につくり、グループ思考でのCDPを実現することで、従業員の成長実感につなげます。従業員は、受け身にならず、自律的な姿勢を持ち“自ら考え、学び、自ら行動する”姿勢のもと、時代変化と合わせ、持続的な成長を遂げていきます。
会社は多様な従業員のキャリアフェーズやライフワークバランスに寄り添った制度を構築するとともに、一人一人が活躍できるよう働く環境を整備していきます。
この三位一体となった「生涯CDP」の取り組みを常に更新し続けることにより、個人の成長を起点に、会社や社会の持続的な成長につなげていきます。
CDP(Career Development Program):従業員のキャリアや能力を開発するための中長期的な計
「生涯CDP」において、従業員一人一人の成長を実現するには、一人一人の異なるキャリアフェーズに寄り添う仕組みや環境を整えることが重要という考えのもと、個人のキャリアの目標設定・成長・成果フェーズ、そして出産や育児、介護などのライフワークバランスに合わせた仕組みを整えています。
あわせて、上司との定期的なキャリア対話により、中長期の成長可能性の把握のもと、戦略的な異動配置や出向により、個人の持つ可能性を最大限に引き出していく取り組みを進めています。
当社グループは、企業の持続的な成長と事業戦略実現に向けて、従業員が自律的に学び、成長し、キャリアにつなげる環境と機会が整っている状態を目指しています。そのために、人財育成のグランドデザインである【MANABIの森】を策定し、教育の環境・機会を全従業員に提供しています。
「MANABIの森」は、①全従業員にとって必要不可欠な教育と、②従業員一人一人が描くキャリアに合わせて自ら選べる教育、の両軸で構成されています。大きく「キャリア教育」「基礎」「専門」「体験教育制度」の4つの分類に沿って、業務教育と能力開発のコンテンツを用意しています。徹底すべきところを押さえつつ、従業員それぞれが描くキャリアに沿って自ら選び学べる機会をeラーニング含めて展開しています。
三越伊勢丹グループでは、継続的な企業成長の実現のためには、「会社が戦略としてやるべきこと」と「従業員がやりたいこと」を最大限マッチングさせること(=適所適財)を重要視しています。適所適財はモチベーションの向上に直結するため、個人のパフォーマンス、ひいては組織・企業としての業績にも大きく影響すると考えます。
また、不確実性が増していく世の中において、企業も人も常に変化し続けることが求められているなか、個人の成長においては会社主導のキャリア開発ではなく、自らの責任でキャリアを選択していくことが必要であると考えます。
そのための情報提供の一環として、グループ内の働き方や仕事内容を把握することができる「会社別・事業別 業務内容紹介」の取り組みを2022年度より始めました。
加えて、「意欲ある人財の自律的なキャリア形成を支援する」という考え方のもと、年一度の「自己申告制度」や、社内での募集案件に自身の意思で自由に応募できる「社内公募制度」、希望部署に自ら手を挙げる「チャレンジ申告制度」など、自律的なキャリア形成を支援する制度を整備しています。
今後は、今まで以上に個々の従業員の要望・スキルなどを深く収集するとともに、「パーソナルデータ」「パフォーマンスデータ」「キャリアデータ」を一元管理することで、「戦略」と「個々人の想いやスキル」を有機的にマッチさせた戦略的な人事配置を効率的に実行していきます。
この取り組みでは、会社が三越伊勢丹の各所属、また当社グループ各社の業務内容や求める人財像などの情報を一元化し、従業員に対して情報提供を行っています。従業員はこの情報をもとに、自らのキャリアを考え、各制度を利用することで個々のキャリア自律を促進していきます。
上司と部下が定期的に行う1対1での対話(1on1ミーティング)においては、日頃の業務に関する対話だけでなく「キャリア対話」も重要テーマの一つに位置づけており、従業員本人が自らのキャリアについて考えるだけでなく、上司と部下との間でキャリアイメージを共有することで将来につながる業務経験の機会の提供などにもつなげていきます。
当社グループで働く上での仕事や進路、異動などの希望や自己啓発、キャリアプランについての意見や意欲を自由に回答し、提出する制度です。
現在の仕事への満足度や、過去のキャリアの振り返り、保有スキルなどの情報も収集することで、より本人の要望や適性に合致した異動配置に活用しています。今後は、従業員個々人の「想い」や「要望」をより深く抽出することで、人財育成や適所適財を通した「従業員満足度の向上」につなげ、企業としての戦略実現につなげます。
なお、この申告制度は毎年1回、社員、メイト社員(地域限定社員)、エルダースタッフ、2022年度からはフェロー社員(時給制契約社員)も対象とし、実施しています。
中期経営計画の実現に向け、広く人財公募の必要性が高い案件の募集に対し、職務遂行に必要な能力や適性を持ち、意欲のある人財を公募する求人型の公募制度です。
なお、この申告制度は社員、メイト社員、エルダースタッフを対象に実施しています。
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
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公募案件数 | 17 | 18 | 26 |
エントリー延べ人数 | 95 | 58 | 81 |
マッチング人数 | 38 | 21 | 28 |
希望する役割や業務内容に対して、活かすことのできる自身の経験、能力を具体的に申告できる求職型の公募制度です。自己申告制度を一段階進め、ポジティブなキャリアチェンジを希望する人に人事担当との直接面接を実施します。
なお、この申告制度は入社7年目以降の社員を対象に実施しています。
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
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エントリー延べ人数 | 37 | 212 | 173 |
マッチング人数 | 11 | 27 | 63 |
(株)三越伊勢丹のメイト社員(地域限定社員)は、全従業員約7,500名のうち約1,500名を占め、百貨店で最も重要な店頭販売で大きな役割を担っています。入社4年目以降を無期雇用とする制度でしたが、2016年4月からは入社初年度より無期雇用とし、スタイリスト(販売員)の働く環境のさらなる改善を図っています。
また、メイト社員から正社員への登用は、登用試験受験までの年数を入社5年目から4年目に短縮した結果、正社員登用者数は年々増加し、2023年度は約86名、累計で約1,160名が正社員となり、うち約55名が管理職に昇格しています。また、フェロー社員(時給制契約社員)からメイト社員への転換者数は、2023年度は8名、累計で約1,500名となっています。
ステージA(部長職)4年目以降の人財を対象に、将来のボードメンバーとなりうる人財プールを形成すべく、育成プログラム「ビジネスリーダープログラム」を実施しています。このプログラムは、2013年度より「企業価値構想力」や「リーダーシップ」の養成を目的に開講しました。これまでに累計150名以上が参加し、その受講者の中から約30名の役員が誕生しています。
また、配置においても、評価、面談、自己申告など多方面から本人の能力・適性を見定め、経営人財育成視点での戦略的な異動配置を実施しています。
当社グループでは、積極的に人財交流を促すことで、グループの一体感の醸成と次世代人財の育成を進めています。例えば、グループ百貨店の入社3年目以降の定期採用社員(選抜者)を首都圏の商品統括部や店舗に配属し、1年間の研修を実施しています。これは主に、リアル店舗でのお客さまお一人お一人とつながるCRM※戦略の理解、デジタルリテラシーの向上、お取組先との関係づくりなど、首都圏ならではの知識やスキル、経験を習得する学びの機会を提供するものです。帰任後は、それらを活かし日々の業務に邁進しています。この研修を継続実施することで、グループ全体のレベルアップと将来の優秀なマネジメント層の早期育成を目指しています。
CRM(Customer Relationship Management):顧客関係管理
三越伊勢丹グループでは、自己啓発のために一時的に休職できる制度やグループ外出向があります。
期間は、最短1カ月から最長2年です。2015年から計11名が本制度を利用しており、取得目的は主に大学院進学です。
外部企業で一定期間経験を積むことで三越伊勢丹グループ内では獲得できない知見・スキルを身につけ、帰任後に組織に還元することおよび個人の成長を目的にグループ外出向を実施しています。
異業種企業や団体、官庁などへ、直近3年間で35社88人が出向しています。
(株)三越伊勢丹に総合職として新卒入社した社員は、最初に百貨店事業の業務を経験します。まずは百貨店事業の現場に身を置き、お客さまと直接接しながら、商売の基本を身につけます。
その後は本人の希望と適性に合わせて、継続して百貨店事業に携わるほか、百貨店事業以外の様々な事業へ配属されます。
入社から6年間は、グループ内企業合同の必修研修を実施し(2022年度は延べ1,002人が参加)、グループ全体最適の追求や企業間コミュニケーションの促進を目指しています。その後昇格試験を経て、最短で7年目にはマネジメント職を担います。
こちらの図は左右にスワイプしてご覧ください
従業員が自主的に学ぶ能力開発の機会提供を拡充しています。代表例として「MANABIの森eラーニング」という、グループ従業員の誰もが利用できるeラーニングシステムを整備しています。業務知識やビジネススキルなど、独自に開発したさまざまなコンテンツがグループ全社計で500コース以上あり、個人デバイスなどからもアクセスできるため、時間的・地理的ハードルを解消し、いつでもどこでも学ぶことができます。これらはグループ外への出向者や育児などの休職者も学ぶことが可能です。
また、当社グループ店舗内で販売に従事するパートナースタッフ(お取組先販売員)が受講可能なコンテンツも用意しています。
そのほか、自主的に参加できる集合研修の実施も拡充しており、所属部署や企業を超えた交流機会の提供も増えています。
リベラルアーツ教育の一例として「SNACK(スナック)※」と題した、当社グループの全従業員が企画・参加できる自律的な学び合いの場を設けています。
2023年度は、従業員が企画・運営するセミナーの提供に加えて、リベラルアーツ教育の強化に取り組み、“高感度上質”戦略の実現に向けて、グループ全従業員の知識・教養の底上げを目指します。
SNACK:Skill(技術)、Network(ネットワーク)、Attitude(姿勢・立ち居振る舞い)、Communication(コミュニケーション)、Knowledge(知識)
当社グループでは、「高い専門知識をもって、お客さまのご期待を上回る感動レベルでお応えすることができる人財」の育成を目指しています。商品領域ごとに求められる専門知識を社内資格と定め、体系的な知識・技術の習得を推進しています。
現在は「インテリアスペシャリスト」「パーソナルカラーアナリスト」「シューカウンセラー」「マスターシューカウンセラー」「マタニティ・ベビー・コンシェルジュ」「手話」「モードフィッター」の社内資格を取得したスタイリスト(販売員)がスキルを活かしながら活躍しています。
資格名 | 取得者数(人) |
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インテリアスペシャリスト | 35 |
パーソナルカラーアナリスト | 397 |
シューカウンセラー | 236 |
マスターシューカウンセラー | 65 |
マタニティ・ベビー・コンシェルジュ | 48 |
手話 | 53 |
モードフィッター | 60 |
(株)三越伊勢丹計
2023年3月時点
お客さまと接点を持つすべてのスタイリストのなかから、お客さま・働く仲間・会社にとってなくてはならない存在として最も優秀な従業員を「エバーグリーン」として敬意を持って認定・表彰しています。2011年度に(株)三越伊勢丹でスタートし、翌2012年度よりグループ全社に拡大、2022年度までの11年間で累計695人が表彰されています。
2021年度には、表彰式のスタイルをオンラインへと変更し、好事例のノウハウ共有もデジタル活用するなど、新たな形に変更しました。
2023年度からは、当社グループ企業理念「VALUES(私たちが大切にする思考と行動)」の体現を選出基準とし、ステークホルダーの“こころ動かす”スタイリストを表彰し、受賞者の取り組み内容を人財育成につなげながら、従業員の自律性を高めモチベーション向上に寄与する表彰制度へと進化しています。