対談・インタビュー
SUSTAINABILITY
2025.02.28
自律的なキャリア形成
#女性活躍 / #人財の育成 / #自律的に学ぶ機会
グループを取り巻く環境が大きく変化するなか、三越伊勢丹グループは、ひとの力を最大化し、その力をもって、従来の百貨店主体の事業から個客業へと転換しようとしています。そのためには百貨店業を中核としながらも、多様な領域で事業を強化し、横の連携を図っていく必要があります。今回は、様々なキャリアパスを持つ人財による座談会を開催し、グループと個人、それぞれの成長について話を聞きました。
三越伊勢丹グループは、これまで以上に人財交流を促進し、ひとの力の最大化を実現させていきます。皆さんは当社グループの様々な領域で活躍されていますが、自身の経験ややりがいなどを聞かせてください。
私は入社以来、20年近くリビング部門を担当していました。現在は情報システム統括部のデータ戦略部に在籍し、個客業への転換に向けてCRMの推進に携わっています。そこでは、中長期のロードマップをもとに、機械学習モデルの構築やダッシュボードの開発などを進めています。多様なビジネス部門と協働してデータ活用の仕組みをつくり上げていく過程にやりがいを感じています。関わる人それぞれに学びや気づきがあり、それらが集合知になって当社グループの価値向上につながっていると思います。リビング領域から全く経験のないシステム部門への異動だったので、当初は会議に出ても半分くらい内容が分からず苦労しました。ただ、私のようにITの専門家ではなくても、現場の課題を知っている人間が関わることであたらしい価値が生まれるので、日々勉強して、情報のキャッチアップに努めています。
斉藤さんは現在、ホールディングスのシステム開発部門とグループ会社の三越伊勢丹システム・ソリューションズ(IMS)を兼務していますね。システム開発の依頼する側・される側の兼務での気づきはありましたか。
従来、ホールディングスはIMSに対してシステムを通じて実現したいことを伝える立場でしたが、兼務によってホールディングス側も「自分たちで実現しなければ」という変化が生まれています。依頼する、依頼されるという関係ではなく、一緒に開発に取り組んでいます。
私もIMSに出向しています。もともとは経理専門のメイト社員としてホールディングスの経理部門に入社。一貫して財務経理部に在籍し、正社員になりました。IMSへ出向のきっかけは、経理の統合会計システムの改修の際に、IMSとの会議に同席し、システム開発に興味を持ったことです。過去の数字を正しくつかむという責任感に経理のやりがいを感じていましたが、今後は未来の便利さに挑むシステム開発がしたい、過去を見る力を活かして、未来へ向かう仕事がしたいと思いました。そこで、正社員になったのをきっかけに、思い切ってチャレンジしようと、異動を希望しました。
勇気ある決断でしたね。実際にIMSに出向してどんな業務をされていますか。
私のこれまでの経験から、経理システムやバックヤード業務のRPA※に携わるのかと考えていましたが、実際に異動するとPOS担当でした。入社以来、一度もお買場に立ったことがなかったので、斉藤さんと同じく悪戦苦闘しました。マニュアルをたくさん取り寄せて、自分自身でPOSレジを実際に使用して頭に叩き込みました。今は、現場でPOSを扱う人を交えて、初めてでも簡単に触れるPOSアプリの内製化を進めています。
百貨店のPOSは株主優待や商品券、クーポンなど多様な仕組みが必要で複雑ですから、誰もが簡単に扱えるものになるとよいですね。平田さんは、地域間の異動を経験されていますね。
私は新潟伊勢丹に入社し、婦人靴や紳士服の販売を経て、法人営業を担当しました。今年度、三越伊勢丹に業務出向になり、東京勤務は初めてになります。現在は、個人外商グループに所属し、伊勢丹新宿本店のアテンダントとして生涯個客化を促進しています。加えて、地域店の外商個客が来店されたときに、新宿・日本橋両本店の利用の促進を図ることが主な業務です。
新潟伊勢丹では法人、三越伊勢丹では個人と、営業のジャンルが大きく変わりましたね。
はい、世界が異なります。法人営業では、店舗にない商品を探してお客さま企業に直販したり、オリジナル商品を製作したりと、店舗から離れた仕事が多かったですが、久しぶりにお店の現場に戻ってきた感覚です。また、法人部門では担当者個人で完結するビジネスでしたが、個人外商では一人の個客に対してチームで対応します。様々な引き出しから個客が望むコンテンツを提案し、満足度向上を図っていくことに、毎回、発見の連続です。
地域店での経験を踏まえ、どのようなときにやりがいを感じますか。
地域店ではブランドの撤退が進み、地方だけでお買物を完結するのが難しくなっています。地方在住のお客さまが首都圏に来られたときに、当社グループの外商ネットワークがワンチームになって対応することで、お客さまの満足度が高まり、それが自身のやりがい、ひいては企業価値の向上につながると感じます。
加藤さんは、BtoCからBtoBへとお客さまが変わる異動を経験されていますね。
私は婦人部門でバイヤーやマネージャー業務を経験した後に、伊勢丹新宿本店の婦人フロアや三越日本橋本店の再開発に携わりました。その後、新規事業の立ち上げや外商など、BtoCを中心に多様な部門を経験してきました。現在は、法人顧客が所有するホテルやオフィスの内装工事、特注家具製作を行うグループ会社の三越伊勢丹プロパティ・デザイン(IMPD)で、BtoBのビジネスに従事しています。
相対するお客さまが変わることで、何か気づきや学びはありましたか。
百貨店が培ってきたBtoCにおけるお客さま対応力がBtoBに活かせるのではないかと考えています。実際、お客さまと向き合う力は、IMPDの建装事業でも役立っています。IMPDが請け負う内装工事は、付加価値が提供できないと価格競争になりがちなビジネスです。私たちはお客さまのハード面のみならずソフト面まで含めてご要望を伺い、当社グループの様々なサービスを連携して提案することで、付加価値向上につなげています。お客さまの信頼獲得のために、ホスピタリティを持って、こころ動かす提案をしていくことはBtoCと変わりありません。
当社グループが目指す個客業への転換には、個客データを識別して、多様性に応じた提案に結びつけなければなりません。そのためには店舗業務のDX化やPOSも含めた生産性向上は不可欠ですし、「まち化」には建装事業のノウハウも重要です。皆さんが多様なキャリアパスを経て、当社グループのキーポジションで活躍していることをあらためて感じることができました。ここからは、今後、自身のキャリアがどう波及して当社グループのひとの力の最大化につながると考えるかを聞いてみたいと思います。
事業環境が大きく変化するなかで、様々な個客ニーズに応えようとすれば、自分自身の多様性が求められます。だからこそ、お客さま対応というソフト面に加えて店舗開発というハード面といった、多角的な視点を得られるよう、自分から率先して異動しキャリアパスを構築してきました。今回参加している皆さんも多様な視点を持っていて、その多様性が集積することでイノベーションが次々にうまれると考えています。
個客業へ転換していくには、ITの活用が不可欠です。これまでの百貨店という店舗を中心にその業務をサポートするというITの位置づけから、ITでビジネス自体を実現するという変化が生じていると感じます。グループの多様なノウハウを集めて、ITを駆使して仕組み化するイメージです。その過程ではITスキルだけでは不十分で、当社グループの業務を通じて獲得できるビジネススキルもバランスよく身につけていくことが大事だと考えています。
仕組み化していくにはグループ間の連携はもちろん、各企業が自分事として個客に応じる姿勢が求められます。以前、百貨店側にいてIMSと接していたときは、どこか請負業務をしている雰囲気がありましたが、今は自分たちが率先して課題を見つけ、システム開発に携わろうという意識が広がっています。それぞれの働き方にもそうした意識を感じる部分があります。
なるほど。リビング領域や経理という異なるジャンルから、IT・システムへの適応。考え方や文化がかなり異なると思いますが、どのようにフィットさせていったのでしょうか。
やはり業務の領域を超えて、お互いを尊重しながら相手の考えをしっかりと聞く。コミュニケーションを密にとることが大事なのだと思います。
私も同感です。現在私が携わるPOS開発でも、店舗でPOSに触れる人に参加してもらう機会を設けています。対等な立場で意見交換することが重要だと思います。
イノベーションは業務の垣根を越えた人財の交流から生まれるのだという思いを強くしました。今後、ますます人財交流を進めていく必要があります。首都圏と地域というコミュニケーションの観点ではどうでしょうか。
実は、地域店のお客さまが首都圏でお買物をされるときに、アテンダントが随行すると、年間購入額が3倍になるという事例があります。アテンダントとして、地域店とコミュニケーションを図るうえで、ひとの力こそがカギになるのではと感じます。お客さまとの関係づくりでは、傾聴力を発揮した会話からの類推、データ分析システムを活用して、最適なタイミングで最適な提案をする。そこにひとの力があるはずだと考えています。
今日集まってもらった皆さんが自分のキャリアに対するビジョンを持って試行錯誤し、成長されていることがよく分かりました。これからも継続して、自身のスキルを伸ばしていってほしいと思います。私はグループ各社全体に、「上司は常に最高のキャリアカウンセラーになってください」と発信し、やりたい業務がある人に対して積極的に経験を積んでいただくように促しています。上司に後押しされながら自分で手を挙げて経験を積んだ人が今度は次の人にバトンを渡す。そして、多様性のある人財が増え、個のお客さまのご要望に真摯にお応えすることにより、個客業が確立していくのだと考えています。それはまさに、「こころ動かす、ひとの力で。」という私たちのミッションに結びつきます。ぜひ、実現に向けて、皆さん一緒にがんばっていきましょう。