リスクマネジメントに関する考え方
三越伊勢丹グループは、リスクが多様化する事業環境において、将来にわたり持続的な成長を可能にするため、内部統制システム構築の基本方針に基づき、グループ全体の平常時におけるリスクの未然防止、再発防止およびインシデント等発生時におけるリスク低減のための対応など、お客さま、お取組先、従業員の安全・安心を最優先に、リスクマネジメント推進体制のさらなる強化に取り組んでいます。
リスクマネジメント運営体制
当社グループのリスクマネジメント体制は、3つのディフェンスラインと5つのレイヤーで構成されています。
各レイヤーの役割と責任を明確化することで、実効性の高いリスクマネジメント体制を構築しています。
リスク抽出・分析・評価のプロセス
当社グループは、グループ全体の事業を取り巻くリスクを5つの領域に分類し、領域ごとにリスクを洗い出し、リスク一覧として整理しています。毎年、その内容を見直し、月次でリスクへの対応状況を分析し、必要に応じて評価を見直しています。また、経営への影響度、発生頻度をもとに事件事故事象となりうるインシデントについては、リスクマップ上に抽出し、その中から重点リスクを選定、3つの部会(コンプライアンス部会・リスク対策部会・サイバーセキュリティ対策部会)を通じて具体的な対策の強化を図っています。
なお、リスクへの対応状況については、グループ経営戦略会議および監査委員会に定期的に報告を実施しています。
リスクマネジメント推進体制
当社グループは、各リスク対策の実効性向上のため、以下のような運営体制を構築しています。
リスクマネジメント推進会議ならびにサイバーセキュリティ推進会議で示された年度方針および実行計画等をもとに、各部会を通じて重点リスクへの具体的な対策の実施(自主点検、訓練等)を行っています。また、モニタリングと評価を経て、改善につなげるというPDCAサイクルに基づいたリスク管理を実行しています。
リスクの分類と事例
詳細リスクについては、有価証券報告書もご覧ください。
事業等のリスク
①経営戦略リスク
| 外部リスク |
- 社会課題の深刻化(気候変動や人権侵害等)
- 社会課題に対する企業の責任やステークホルダーからの要請の高まり
|
| 内部リスク |
- サステナビリティ経営推進の遅れ(脱炭素や人権デュー・ディリジェンス等)
|
リスク認識
近年、世界各地において気候変動に伴う自然災害の激甚化等、私たちを取り巻く社会課題は年々深刻さを増しております。このような背景から、各企業は気候変動への取り組みや循環型社会の実現、人権尊重、持続可能なサプライチェーンの構築、地域社会への貢献など、経済的価値の追求だけではなく、社会的価値の両立を目指した企業活動を行うことが強く求められております。
このような社会の潮流に対して、当社グループのサステナビリティ経営が遅れをとった場合、お客さまを始めとするステークホルダー(お取組先、株主、地域社会、従業員等)からの信用の失墜による市場競争力低下、資金調達や人財獲得が困難となる等、企業経営に悪影響を及ぼす可能性があります。
特に、脱炭素に向けた取り組みが遅れた場合、大量のエネルギー消費による環境負荷増加につながるだけでなく、将来的に環境規制の強化やエネルギーコストの増加等が発生し、当社グループの財務状況に悪影響を与える可能性があります。
対応策
サステナビリティ経営推進
- サステナビリティに関する課題は経営基盤を支える重要課題と捉え、サステナビリティ基本方針のもと取り組みを進めております。
サステナビリティ推進体制
- 当社グループでは、CEOを議長とするサステナビリティ推進会議を通じ、サステナビリティ活動の方向性・重点取り組み等を共有し、取り組みの推進・浸透を図っております。また、CAO兼CROを議長とするサステナビリティ推進部会では、各課題の具体的な取り組みの検討を行っております。
4つの重点取り組み(マテリアリティ)
- 本業を活かして取り組むことが出来るか、加えて当社グループが取り組む意義があり成果を上げることができるかという観点を踏まえ、各事業戦略とリンケージさせながら、4つの重点取り組み(①人・地域をつなぐ ②持続可能な環境・社会をつなぐ ③ひとの力の最大化 ④グループガバナンス・コミュニケーション)に取り組んでおります。
サステナビリティ活動 think good の取り組み
- “think good”の取り組みをグループ全社に拡大し、一丸となって取り組んでおります。
①多様な価値観の尊重 ②地域社会との共創 ③文化の継承と革新 ④環境への取り組み
ステークホルダーへの取り組み
- 対お客さま
サステナビリティ活動に関するアンケートを、2013年より毎年実施しております。アンケートの集計結果を分析・情報開示の上、頂戴した貴重なご意見・ご要望を、サステナビリティ活動に活かしております。
- 対お取組先
小売業を中核とする当社グループの事業活動は、多数のお取組先との協働が不可欠と考えております。サプライチェーン上の持続可能性に配慮するため、お取組先と調達先に対して「お取組先行動規範」の遵守をお願いしております。また、2年に一度、「責任ある調達活動に関するお取組先アンケート」を実施し、潜在リスクをはじめとするサプライチェーン全体の状況把握を行っております。またお取組先との個別対話を実施し、実践に向けた課題やご要望をヒアリングするとともに、取り組みの改善に向けた意見交換を行っております。
人権デュー・ディリジェンスへの取り組み
- 当社グループでは、人権リスクを発生可能性と深刻度でマッピングした人権リスクマップを作成しております。これにより、特に深刻な人権リスクがサプライチェーン上に潜在する可能性を認識し、「人権リスクマップ」を活用して常に意識を高め、適切な対応を行うことで、人権リスクの未然防止、発生時における是正、防止、低減に向けた取り組みを進めております。加えて、サプライチェーンに開かれた通報窓口として25年4月に「人権救済外部窓口」を設置し、運用を開始しております。
- 対従業員
当社グループ全従業員が人権と事業活動とのつながりを理解することを目的に、グループ全社共通のeラーニングや全国のグループ百貨店とグループ会社を対象にした対面研修を実施し、当社グループを取り巻く環境への理解を深め、社会課題の解決に取り組んでおります。
気候変動・脱炭素社会の実現に向けた取り組み
- 当社グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)提言へ賛同しており、気候変動によるリスクの把握と当社の財務への影響を分析し、情報開示を行っております。
- 気候変動の緩和策としては、「三越伊勢丹グループ2030年環境中期目標(温室効果ガス排出量2023年比▲42%および再生可能エネルギー導入比率55%)」および「三越伊勢丹グループ2050年環境長期目標(温室効果ガス排出量実質ゼロ)」を設定し、脱炭素社会の実現に向けた様々な取り組みを推進しております。
- 気候変動への適応策としては、自然災害の激甚化を想定した対応を行っております。詳細は、「④災害・犯罪リスク 災害等の対応に関するリスク」の項目において詳しく記載しております。
| 外部リスク |
- デジタル化の加速・急速な情報化社会の進行・技術革新
|
| 内部リスク |
- DX推進対応の遅れ、デジタル人財不足、システム障害管理体制の不備
- 従業員によるSNSトラブル、AIシステム・サービスの不適切な利用
|
リスク認識
当社グループは、デジタル技術を活用したサービス向上や業務改革を推進しております。一方で、デジタル社会への対応の遅れは、競争力や収益性の低下につながる可能性があります。また、デジタル人財の不足やシステム障害の発生、従業員によるSNSトラブル、AI活用に伴う情報漏洩や第三者の権利侵害などが生じた場合、事業活動や社会信用に影響を及ぼす可能性があると認識しております。
対応策
- デジタルテクノロジーを活用したDX推進と競争力の維持・向上
- DX推進を支えるデジタル人財の確保・育成
- システム障害の未然防止と発生時対応体制の強化
- 従業員によるSNSトラブルの未然防止・再発防止に向けた取り組み
- AIシステム・サービスの適切な利活用に向けたルール整備と教育
関連:
| 外部リスク |
- 既存の百貨店ビジネスモデルの衰退、想定を上回る環境変化(人件費、物価上昇等)
|
| 内部リスク |
|
リスク認識
当社グループを取り巻く事業環境は、人口動態や消費行動の変化、デジタル化の進展などにより大きく変化しております。加えて、市場競争の激化やコストの上昇も見込まれるなか、新たなビジネスモデルへの転換が求められております。こうした変化への対応が遅れた場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
対応策
- 「館業」から「個客業」へのビジネスモデル変革の推進
- グループ各社の連携による事業機会の拡大と成長余地の確保
- 変革を迅速かつ持続的に進めるための経営基盤強化
| 外部リスク |
|
| 内部リスク |
- 従業員の安全上・労務上の問題、現地法規制対応不備、現地のガバナンス不全
|
リスク認識
当社グループは、海外において店舗を展開するとともに、不動産事業にも参画しております。これらの事業は、為替変動や各国の法制度・規制の変更、地政学リスクなどの影響を受ける可能性があります。また、従業員の安全確保や労務管理上の問題、現地法規制への対応不備、ガバナンスの不全に加え、国際情勢の変化に伴う商品供給網への影響等が生じた場合、事業活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。
対応策
- 現地ガバナンスおよび法令遵守体制の強化
- 従業員の安全確保および労務管理への取り組み
- 地政学リスクを踏まえた事業・財務運営への対応
- 商品供給網およびレピュテーションリスクへの対応
②財務リスク
リスク認識
当社グループは、「個客業」への変革を推進するため、DXや不動産などへの継続的な投資を行っており、その実行には安定的な資金の確保が必要となります。一方で、業績の変動や金融市場環境の変化、金利の上昇等により、必要な資金の調達が困難となる可能性があります。資金調達環境が悪化した場合、成長戦略や投資計画の実行に影響を及ぼす可能性があります。
対応策
- 財務健全性の維持・向上による資金調達力の確保
- 財務体質の改善と資金総出力の強化
- 事業別利益管理と資本効率の向上
- 投資規律の徹底と柔軟な投資運営
③人事・労務リスク
| 外部リスク |
- 少子高齢化・生産労働人口減少に伴う人財獲得競争の激化
|
| 内部リスク |
- 経営・戦略実現・事業基盤を支える持続的な人財獲得・育成の遅れ
|
リスク認識
当社グループは、事業成長を支える専門人財や経営人財の確保・育成を重要な経営課題と位置付けております。一方で、少子高齢化の進展に伴う労働人口の減少により人財獲得競争が激化するなか、必要な人財の確保や育成ができない場合、事業運営や成長戦略に影響を及ぼす可能性があります。
対応策
- 事業成長を支える専門人財・経営人財の確保
- 経営戦略の実現を支える人財育成
- 従業員エンゲージメントの向上と定着
関連:
④災害・犯罪リスク
| 外部リスク |
- 自然災害の激甚化、感染症拡大、他国からのミサイル攻撃
|
| 内部リスク |
|
リスク認識
当社グループは、百貨店事業を中核として事業を展開しており、地震や台風、豪雨、火災などの災害や、感染症の拡大による影響を受ける可能性があります。これらが発生した場合、お客さまや従業員の人的被害、店舗設備等の物的被害に加え、店舗運営や物流・商品供給網への支障、営業の停止等により、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
対応策
- 事業継続計画(BCP)および災害対策基本計画の策定・見直し
- 風水害の発生に備えた対応マニュアルの整備
- 全国一斉安否確認訓練と防火防災訓練の継続的な実施
- 感染症拡大時における感染予防策の実施
リスク認識
近年、特殊詐欺や強盗、窃盗などの組織犯罪が巧妙化・多様化しており、当社グループの店舗においても、こうした犯罪に巻き込まれる可能性があります。また、従業員による不正・違法行為が発生した場合、社会的信用やブランド価値の低下を招く恐れがあります。これらのリスクが顕在化した場合、経済的、物理的損失や営業停止を引き起こし、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
対応策
- 所轄警察署等と連携した防犯訓練の実施および犯罪被害の未然防止策の推進
- コンプライアンス教育を通じた従業員の法令遵守意識の向上
⑤オペレーショナルリスク
| 外部リスク |
|
| 内部リスク |
- お取組先との公平・公正な取引における問題(商品調達等)
- 商品の品質・安全管理における体制上の問題
|
リスク認識
当社グループは、お客さまに安全・安心な商品・サービスを提供するとともに、お取組先との公平・公正な取引に努めております。一方で、法令や各種規制への対応の不備、不適切な取引、品質・安全上の問題が発生した場合、社会的信用やブランド価値の低下を招き、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
対応策
- 法令遵守に向けた教育の実施
- お取組先との公平・公正な取引関係の推進
- 商品の品質および安全管理体制の強化
関連:
リスク認識
当社グループは、百貨店、金融、不動産、関連事業を通じて、多くのお客さまの個人情報をお預かりしております。近年は、サイバー攻撃や不正アクセスの脅威が高まっているほか、個人情報保護に対する社会的要請や法規制も強まっております。サイバー攻撃や従業員の過失等により個人情報の漏洩や不適切な利用が発生した場合、損害賠償や社会的信用の低下を招き、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
対応策
- 情報セキュリティガバナンスおよびサイバーセキュリティ対策の強化
- 個人情報の適正な取得・利用および管理体制の整備
- 従業員に対する情報管理教育の継続的な実施
- 国内外の法令に対応した情報管理体制の構築
事例:リスクへの取り組み
当社グループでは、サイバーセキュリティ対策部会、リスク対策部会を毎月開催し、重点リスクに対する具体的な対策や好事例等を発信することで、グループ全体のレベルアップを図っています。
サイバーセキュリティ対策部会~情報セキュリティリスクへの対応~
昨今、日本企業が国内外からのサイバー攻撃を受ける事例が増加しており、情報セキュリティガバナンスのさらなる強化が求められています。情報セキュリティリスクへの備えとしてサイバーセキュリティ対策部会において、人的・組織的・技術的な対策の推進を図っています。人的・組織的対策では、情報セキュリティに関する従業員のリテラシー向上を図るため、システム部門における専門的なセキュリティ人財の育成や、セキュリティ教育、サイバーインシデント訓練を実施しています。また、技術的対策では、サイバー攻撃に対し、防御、監視、検知、対応するためのセキュリティツールの導入と運用を強化しています。
当社グループにおける訓練(2025年度)
リスク対策部会~自然災害リスクへの対応~
近年、世界各地で気候変動に伴う自然災害が激甚化、頻発化しており、企業の事業継続性の担保が求められています。当社グループの事業継続マネジメント(BCM)では、事業継続計画書の見直しと改定、教育啓蒙・訓練の実施、課題の抽出と課題への対策実施などのPDCAサイクルを回していくことで、当社グループの重要業務の継続力と復旧力の向上に努めています。
当社グループにおける訓練(2025年度)
首都直下地震を想定した各対策本部連携訓練の様子
- 2025年7月:首都直下地震を想定した各対策本部連携訓練
- 2026年2月:南海トラフ地震、富士山噴火を想定した各対策本部連携訓練