2022.06.27

三越伊勢丹アクセラレータープログラムを経て 「NEW PORT」デリバリーシステム運営は拡大フェーズへ

スカイファーム木村様、三越伊勢丹イノベーションズ高橋様、奥村様の写真

スカイファーム株式会社 代表取締役 木村 拓也さま

株式会社 三越伊勢丹イノベーションズ 高橋 裕二

株式会社 三越伊勢丹ホールディングス 奥村 諒 (アライアンス推進室)

狭小eコマースに可能性を感じて起業

 

デリバリー・テイクアウトプラットフォーム立ち上げまでの経緯

木村さま(以下、木村):私は元々、狭小経済圏に興味をもっていました。ECショッピングモールで遠くにあるものが簡単に購入できるのも便利でしょうが、たとえば同じ街に、少し価格は高いけれどオーガニックを使った石鹸があって、それをスマホで簡単に買えるなら、市場を変えることができるのではないか、といったことを常々考えていました。

 

そこに何らかのストーリーがあれば、なおさら商品の魅力は上がります。生活圏である街のなかで価値のある買い物を便利にできるモデルをネットで再現できるのではないかという、狭小eコマースに可能性を感じて、2015年にスカイファームを創業しました。

木村拓也様の写真

スカイファーム創業以前のキャリア

木村:実は大学卒業後、仲間とWebCM制作会社を創業したのですが、上手くいかず2年ほどで退職しました。「もう二度と会社経営はしたくない」と思うほどの挫折経験でした。

 

その後外資系企業を経て国内大手IT企業でWebマーケティングに携わり、プロモーションの仕事を通して多くのスタートアップ企業の成功を目の当たりにしました。たとえば月5万円の予算でマーケティングを始めた企業が、1年後に1億円の予算をもつようになる姿を見て「自分ももう一度」という思いが湧き起こってきたのです。

 

それで狭小eコマースで起業したのですが、サービスとしては需要が高いであろうフードデリバリーからスタートしました。失敗経験があるので今回はビジネスモデルが固まるまで一人でやろうと決めていました。自分でシステムを組んで受注したら自分がデリバリーして、改善点に気付いたら修正して、といった感じでした。

デリバリープラットフォーム「NEW PORT」

サービスの特徴、ベネフィット

木村:競合が少なくて就業人口が多い点で、横浜みなとみらいエリアでスタートしましたが、最初は飲食店にデリバリーをやらせて欲しい、と営業しても話が通じませんでした。ひとつのターニングポイントは外資系のフードデリバリーの進出です。フードデリバリーが浸透していくことで、私たちがどのようなサービスを提供するか理解してもらえるようになりました。

2016年にデリバリー、テイクアウト、モバイルオーダーを簡単にスタートできるプラットフォーム「NEW PORT」を立ち上げ、その魅力をアピールしていきました。「NEW PORT」はサイトの立ち上げからブラッシュアップを重ね、オーダーと決済の一元システムに加えて、デリバリーを物流のプロと連携している点なども差別化につなげ、収益アップとともにオペレーションを軽減する特徴あるエリアデリバリーサービスとして支持されるようになりました。

 

木村拓也様の写真

法人にギフトをお届けする2つ目のサービス

木村:法人向けの手土産コンシェルジュサービス「TANOMO GIFT」があります。これは食事ではなく商材はギフトです。オンデマンドで専属のスタッフがご指定の日時に手土産をお届けし、当日配送も可能です。大手町、丸の内、有楽町エリア限定で、お取引さまへの手土産をはじめ宴席やイベント、社内コミュニケーションなどのシーンで利用いただいています。

 

弊社はサービスごとにロジスティクスも構築するのでその確実性も評価いただいています。このほか期間限定ですがアパレルやシューズなどファッションを扱うOMOプロジェクトもスタートしています。

三越日本橋店に「NEW PORT」導入、今後コンテンツ拡張の予定

IMIとスカイファームの協業のきっかけ、支援体制

高橋:弊社で開催したアクセラレータープログラムに応募いただいたのがきっかけです。社会環境が変化するなかで百貨店だけで新しい価値を生み出すのはなかなか難しい面もあります。アクセラレータープログラムはそうした背景からスタートし、新しい技術やサービスを取り入れて新規事業をつくっていこうという考えがあります。スカイファームは2018年の応募で翌年に採択となりました。その年は150社以上の応募があり、最終的に協業に至った5社のうちの1社がスカイファームです。

奥村:また「NEW PORT」が次世代型の上質なプラットフォームであり、グループの資源活用や目指す方向性との親和性を高いことから、2020年には弊社から出資も実施され、より密接な協業そして支援体制が整っているといえます。

奥村様の写真

奥村:私自身は、2021年4月から1年間、スカイファームへ出向して営業支援に携わりました。基本的には横浜におけるサービスプロダクトの運営と拡大フェーズにコミットしました。

 

加盟店拡大の戦略を推進し、複数の店舗、ブランドの出品を担当しました。そのなかには三越日本橋店の「NEW PORT」導入もあり、店舗や食品チームとの商品選定やお取組先交渉、調整業務を担いました。現在は三越日本橋店ではギフトの商材と地下1階のお菓子類を出品しています。

高橋:グループとしてeコマース、配送システムはもちろんありましたがオンデマンドで即日デリバリーする機能は持っていなかったので、お取組先ならびにお客さまに新しいサービスをご提供できていると思います。

シナジーを高めて「まち化」構想を推進

今後の協業、展開の在り方について

木村:既存軸と新規軸があり、既存軸ではフードとギフトのデリバリー、取り置きサービスで取り扱い店舗、利用者数を増やしていくことです。新機軸ではアパレルブランドと「NEW PORT」導入の商談が始まっています。

 

いずれも三越伊勢丹グループとのシナジーを生んでいける商材なので、今後も協業の幅を広げていきたいと考えています。それ以外でも都心部を中心とした商業施設向けに「NEW PORT」の拡大、OMOの取り組みを幅広く推進していきます。

木村拓也様の写真

高橋:今後はまずフードデリバリーに力を入れて成功させて、ほかの店舗に広げていくことを計画しています。また飲食店以外もギフトや生活用品をはじめ色々な展開が考えられます。ご来店いただき上質なサービス、接客を受けて商品をご購入いただいたり、食事を楽しんでいただいたりすることが変わらずにある一方で、デリバリーという便利な機能で豊かさを味わっていただき、新たなご満足を提供したい。それがまたご来店につながっていくというサイクルもあると思います。

 

百貨店を中心とした「まち化」構想については、単店では実現できなかったものが店舗の周辺に色々なコンテンツを揃えることでまち全体にお客さまが集まってくる仕組みをつくることなので、スカイファームのような機能をもったシナジーある企業と連携し、価値を共創していくことを期待しています。

高橋裕二様の写真

横浜を模範に地域の個性を活かしたローカルモデルを全国へ波及

木村:弊社はミッションとして「GOOD TIME,GOOD PLACE 世の中に居場所をつくる」を掲げています。これは知らない土地に買い物に行ってもモバイルがあれば私たちのシステムを通して簡単に買い物ができる居心地の良さを意味しています。また店舗には顧客情報が還元されるのでナンバーではなく「人」として相対することができるのも特徴です。

 

街づくりで言うと、この街だからこそあるモノ、コト、ヒトを、デジタルを通して紹介することで街の特徴が現れていくと思います。同じ顔をした街ばかりでは面白くありません。そのエリアごとのローカル性を大切にして、お客さまをセグメントしたデータとして扱わないことも大切だと思っています。

高橋:スカイファームさんは横浜で、出品する作り手さんの良さ、個性を尊重してプラットフォームを構築している印象があり、そこが素晴らしいと思います。

木村:横浜でモデルができたらそれをほかの街でも展開していけると思っています。

高橋:ぜひそこでまた協業していきたいですね。