“think good”の取り組み事例
SUSTAINABILITY
2025.11.18
百貨店業での取り組み
#地域社会との共創 / #環境への取り組み
ミツバチは花粉を運ぶポリネーターとして植物の受粉を助け、生物多様性の保全に寄与するといわれています。
三越伊勢丹グループでは、伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店などの店舗で養蜂活動を行っています。福岡三越では2017年度より「岩田屋三越ファームプロジェクト」の一環で蜂蜜専門店<ラベイユ>と協業し、福岡三越の屋上で都市養蜂を行ってきました。従業員が採蜜に参加することで生産背景を理解し、お客さまには「福岡天神はちみつ」の販売を通じて、地域の自然や作り手の想いを伝えています。
福岡三越が都市養蜂に取り組む背景には、生物多様性の減少という社会課題があります。福岡三越は20周年の節目に、地域に根ざす価値を創出すると同時に、環境課題へ実践的に寄与する取り組みの実施を決定しました。はちみつはその土地ごとの植物相を反映し「地域の味」が現れるため、商品としての差別化に有効です。加えて、来店されるお客さまへ環境意識の啓発、地域ブランドの創出、従業員の現場学習といった多面的な効果を期待できる点も大きな後押しになりました。
特に重要だったのは、従業員自身が「製造現場の苦労や店舗周辺の自然環境を体験し、それをお客さまに伝える責任を負うことで、作り手とお客さまを結ぶ架け橋になってほしい」という思いです。この思いを伝えたところ、幅広い層の従業員から参加の手が挙がり、社内の学びや発信力が一層強化されました。こうした社内外の強みを活かし、天神エリアの地域ブランドの創出を同時に目指すことが、本プロジェクトの出発点です。
三越日本橋本店での先行事例を踏まえ、福岡三越の<ラベイユ>との協業がスタートしました。協業には技術面だけでなく、事前調査や関係者との調整が不可欠でした。都市部で蜜が集まるか懸念されましたが、現地調査の結果、舞鶴公園や大濠公園などの緑地が主要な蜜源であることを確認。その後、行政申請・養蜂協会の承認・屋上設置場所の調整・採蜜後の蜂の預かり先確保など、多面的な調整を<ラベイユ>の知見と経験に支えられて進めました。
福岡三越の屋上養蜂は、年間の計画に沿って安全・衛生を最優先に実施しています。毎年3月中旬に巣箱を設置し、西洋ミツバチ約8~10万匹を投入。春に巣作りと子育てが進み、6~7月にかけて採蜜を行います。<ラベイユ>福岡三越店副店長でもある都市養蜂担当者の指導の下、蜜蝋の蓋を丁寧に取り除き、遠心分離機で2回ろ過するなど、衛生管理を徹底しています。また、刺傷防止の服装や行動指導を徹底するとともに、猛暑期の作業時間対策、水や洗剤の使用を避ける衛生ルールも厳守しています。
採蜜量は年々増加傾向にあり、直近では2023年が102.8kg、2024年が126.8kg、2025年は154.2kgを記録しました。2025年のはちみつは糖度約83%の深い味わいで、まろやかな甘みと花の香りが特徴です。
西洋ミツバチの1群あたりの平均は天候やダニ被害などにより変動しますが、総量の増加はプロジェクトが着実に定着している証と言えます。採蜜後は巣箱を撤去し、ミツバチは秋以降に預かってもらえる養蜂場へ移送して群の管理を継続しています。
採蜜後は<ラベイユ>の工場でろ過・検査・瓶詰めを行い、3サイズで商品化。2025年は8月2日の「ハニーの日」に合わせて、福岡三越<ラベイユ>で新蜜の販売を開始しています。
店頭では「屋上で採れた限定品」「天神の百花蜜」「年ごとに変わる風味」といった背景をPOPや接客で丁寧に伝えています。従業員が採蜜体験で得た知見が商品説明に深みを与え、お客さまに地域の物語をより実感していただけるようになりました。
こうした味わいの個性とストーリー性が支持され、一度食べた方が「今年はどんな味なのか楽しみ」とリピート購入されるケースが増えています。また、福岡三越でしか買えないという希少性から県外の来店客が進物として選ぶことも多く、「贈り物にぴったり」といった声も寄せられています。採れたはちみつは菓子メーカーとのコラボスイーツにも活用され、お中元・お歳暮の季節限定品として展開しています。
担当者コメント
株式会社岩田屋三越 福岡三越 食品・レストラン営業部 和洋菓子担当
淀川みはる
※所属は2025年11月時点のものです。
「今年、初めて採蜜の担当を務めました。猛暑の中での作業は体力を使いますが、<ラベイユ>の皆さんの手際と知見に学ぶことが多く、貴重な実地研修になりました。従業員自ら採蜜に携わることで、はちみつの香りや味わいだけでなく、生産の苦労や自然のつながりを実感できます。次年度は近隣小学校との連携を進め、子どもたちが五感で学べる環境教育の機会を設けたいと考えています」
今後は巣箱の群数を段階的に増やし、地域住民や学校と連携した採蜜体験などの参加型プログラムを展開していく予定です。さらに、2026年度に迎える岩田屋創立90周年を機に、さまざまなお取組先とのコラボレーション商品を拡充します。こうして「天神の味」をより多くのお客さまに届けるとともに、生物多様性という環境課題に地域の方が触れる機会を作ってまいります。
お問い合わせ先:株式会社岩田屋三越