“think good”の取り組み事例
SUSTAINABILITY
2025.11.21
百貨店業での取り組み
#地域社会との共創 / #環境への取り組み
愛知県一宮市を中心にした尾州地域は、木曽川の豊かな水源や地場の職人技術に支えられ、日本有数の織物産地として発展しました。しかし、海外生産へのシフトや職人の高齢化、後継者不足など、時代の変化を理由に、ここ数十年間は規模縮小の傾向にあります。また、生産にあたり発生する残反に関しても、一般消費者向けへの二次流通などの仕組ができてきたものの、保管や流通の難しさはいまだ残っている現状です。
伊勢丹新宿本店では、メンズテーラードでのアップサイクル実績や「ピースdeミライ」での素材活用を踏まえ、2025年10月8日〜21日に開催した“think good”キャンペーンのテーマ「地域資源の活用」に合わせ、尾州産地に光を当てることにしました。伊勢丹新宿本店のキュレーション力と顧客接点を生かし、「魅力的な服を届ける」ことを起点に、活用方法が見いだせていない良質な残反生地を婦人服と子ども服へと生まれ変わらせる企画を実施。商品の販売に留まらず、店内装飾やワークショップ、トークショーなどを通じて、尾州産地の魅力を多面的に伝えることを目指しました。
担当バイヤーは尾州の織元・メーカーを訪れ、デッドストック化している開発反(試作用生地)や残反を一反ずつ確認する作業から始めました。約2,000本にも及ぶ生地の中からは、「こころが躍る色・素材・柄」を重視しつつ、「伊勢丹のお客さまの審美眼に合う色・質感」「協業ブランドの表現を引き出せること」「残メーターで商品化が可能であること」を基準に選定しました。残反は反ごとに幅や残メーター数、色調が異なり、作れるアイテムの幅が大きく左右されます。各ブランドのディレクターと綿密にコミュニケーションを重ね、限られたメーター数や素材の季節性、生地の特性に合わせたパターン設計やデザイン調整を行い、商品化へとつなげました。
本企画に賛同いただいたブランドには、手に取りたくなる魅力的なデザインを第一義とし、そのうえで生産背景が伝わることも重視していただきました。加えて、通常コレクションでは表現しにくい遊び心や特別感を落とし込んでいただくよう依頼し、素材の魅力がお客さまに伝わる商品づくりを目指しました。
このようにして生み出されたアイテムは、2025年10月8日(水)~21日(火)に伊勢丹新宿本店 本館3階 婦人服フロアおよび本館6階 子供服フロアでご紹介しました。婦人服<デパリエ>や子ども服<センス オブ ワンダー>を含む全8ブランド、31型を展開。さらに店内装飾にも尾州生地を用いるなど、お客さまの目を引く工夫をしました。
<デパリエ>は1点物のコートやジャケットなど秋冬アイテム約20型ご紹介
美しいジャカード生地の身頃と、細コール生地の上にチュールを重ねた<センス オブ ワンダー>のワンピース
尾州生地の魅力や各ブランドの高いクリエイション、関係者の想いがプロダクトに反映され、会場では多くのブランドの尾州生地アイテムが手に取られる光景が見られるなど、全体として盛況となりました。中でも<デパリエ>でご用意していた20点のうち、会期初週で約半数がご購入に結び付き、特に注目を集めました。
また、子供服フロアでは「服育」の観点から「親子でかんがえよう。think good with 尾州」を開催。尾州生地を使ったワークショップや日本文化・伝統をテーマにしたトークイベントを実施し、約30名の親子が参加されました。
親子で素材や伝統について学ぶ機会を提供したことで、来場者からは「素材の背景に触れる機会があり、尾州への理解が深まった」との声が寄せられました。今回の取り組みは、アップサイクル商品のご紹介にとどまらず、地域産地の価値を社会に伝える教育的な側面も兼ね備えたイベントとして、今後長期的な地域貢献につながることが期待されます。
担当者コメント
第2MDグループ 新宿婦人・子供商品部 ファインクローズ コンテンポラリー
山﨑真奈
※所属は2025年11月時点のものです。
「伊勢丹新宿本店として、まず『ファッションの喜び』を届けることを出発点に企画を進めました。多くの反物に触れ、『どんな生地が素敵か』『伊勢丹のお客さまの審美眼にかなうか』を見極め、お取組先のクリエイション力で服になった瞬間には深い感動を覚えました。本取り組みを通じて、素材の背景を伝えながら、お客さまと産地をつなぐことの大切さを改めて実感しています」
「活用方法が見いだせていない良質な残反を選び、商品化して、お客さまへ届ける」スキームを基盤に、今後は残反の流通や一般販売の仕組みづくり、学生や若手デザイナーとの共創など、産地の持続性に寄与する施策を展開していきます。また、得られた知見を他産地にも展開し、地域やお取組先との価値向上に貢献してまいります。
お問い合わせ先:伊勢丹新宿本店