CEO対談

SUSTAINABILITY

SDGパートナーズ 代表取締役CEO 田瀬 和夫 氏 三越伊勢丹ホールディングス取締役 代表執行役社長 CEO 細谷 敏幸

田瀬 和夫 氏 プロフィール

SDGパートナーズ代表取締役CEO。国連職員や外務省などを経て、サステナビリティ、SDGs、ビジネスと人権の専門家として企業・自治体への支援や講演実績も多数。

なぜ三越伊勢丹グループはサステナビリティに取り組むのですか?

なぜ、三越伊勢丹グループはサステナビリティに取り組むのか。
その原点ともいえるこの問いに、CEOの細谷が答えます。
対談相手は、SDGパートナーズ有限会社代表取締役CEO田瀬 和夫氏。
サステナビリティの専門家との対話で、経営トップはどのように答えたのでしょうか。

お客さまの声を聞きながら歩んできた当社グループの歴史

田瀬氏

御社の歩みは、三越の前身の呉服店「越後屋」から数えて350年以上になると伺っています。これほど長く続いてこられた理由は、どのような価値を世の中に提供してきたからだとお考えですか。

細谷

「提供価値」というと難しく感じますが、創業以来、私たちが続けてきたことは、「お客さまのお困りごとを解決する」「お客さまに喜んでいただく」という非常にシンプルなことです。1904年に「デパートメントストア宣言」を行い、呉服という1つのアイテムの店から百貨の品揃えの店へと転換したのも、お客さまの要望により幅広く応えるためでした。目の前のお客さまの声にひたすら耳を傾け続けてきたこと、その積み重ねが長い歴史を築く原動力になったと考えています。ただ、不確実性が高まる今の社会では、このビジネスモデルが維持できるかどうかは私自身大きな問いがあると感じています。

田瀬氏

2025年度からの中期経営計画では、「“館業”から“個客業”への変革」を掲げられましたね。

細谷

“館業”とは、館の中に百貨を揃えてお客さまを集め、売れるのを待つという従来の方法です。これからは、一人ひとりのお客さまとつながり、ニーズを的確に捉えて価値ある提案をする“個客業”への進化が必要です。これまで得てきた信頼をより一層ビジネスに活かしていきます。ECの普及などにより消費行動も多様化していますし、単に「お客さまに喜んでいただく」だけでなく、長期的な視点でお客さまや社会と向き合うことが重要だと感じています。

サステナビリティこそ、経営の根幹

田瀬氏

経営者として、サステナビリティをどう捉えていらっしゃいますか。

細谷

2021年の社長就任の際にまず、「サステナビリティ経営を取り入れる」と宣言しました。私にとって、サステナビリティは経営に密接に関わっています。

田瀬氏

就任と同時にそうした宣言をされた意図は何だったのでしょうか?

細谷

特別なことをしようと考えたわけではありません。サステナビリティとは、事業で得た利益を社会に還元し、お客さまの「嫌」を感動的に解決し続けることだと考えています。つまり、私たちの事業活動そのものがサステナビリティだといえるのではないでしょうか。

350年続いた歴史こそがサステナビリティ経営の根幹。
進化・変革を続け、100年先も続く存在に。

細谷

350年続く企業として、持続可能性はすでに私たちのDNAに深く刻まれていると感じます。経営の根幹にサステナビリティがあるからこそ、ここまで事業を長く継続できたのではないかと思うのです。

田瀬氏

すばらしいお考えですね。ただ、現代においては、自社の事業だけではなくグローバルなサプライチェーン全体におけるサステナビリティを実現することが求められています。百貨店の場合、多くのテナント企業が入り、そこからサプライチェーンが広がるため、全体のコントロールが難しい部分もあるのではないでしょうか。

細谷

おっしゃる通り、私たちのお取組先は現在2万社以上あり、規模も体制もさまざまです。全てのお取組先の皆さまと丁寧に対話を重ね、協働しながら一緒にやっていくことが大切です。理解や実践に時間を要することもありますが、諦めずに粘り強く継続することが全体のレベル向上につながると信じています。

「ひとの力」で、たゆまざる進化・変革を

田瀬氏

今後、例えば次の10年を見据えたとき、経営の舵取りの上で「鍵」となるのは何だとお考えですか。

細谷

先に触れた“個客業”をどう深化させていけるかだと思っています。お客さま一人ひとりの心に深く入り込み、感動を与えられる提案をし続けていくことが重要です。そのためには、もちろんデジタルも活用しますが、やはり重要なのは「ひと」です。「ひとの力」こそ、私たちのビジネスの基盤です。その最大化が、成長のドライバーになるのだと思います。3年前に約16,000人のグループ全社員で考えつくりあげた企業理念「こころ動かす、ひとの力で。」はその象徴です。

田瀬氏

100年後の三越伊勢丹グループに、「こんな会社であってほしい」という思いをお聞かせください。

細谷

「こうあってほしい」と限定するよりも、100年後も、少しずつ変化しながら事業が続いていてほしい、という思いが強いですね。そのための変化の一歩を踏み出すことが私の役割だと考えています。

田瀬氏

最後に、従業員の皆さんへのメッセージをお願いします。

細谷

一番伝えたいのは、どんな状況でも「自分たちならできる」という自信を持っていてほしいということです。そして、350年の歴史を大切にし、誇りを持ちつつも、現状に甘んじることなく進化・変革を続けていってほしい。これからも、そう伝え続けたいと思っています。

(対談実施日:2025年7月30日)

田瀬氏より 対談を終えて

今回の対談では、三越伊勢丹グループが350年の歴史の中で培ってきた信頼や人の力、そしてサステナビリティを経営の根幹に据える姿勢に強く共感しました。変化と挑戦を恐れず、未来に向けて進化し続ける企業文化は、社会に新たな価値を提供し続ける原動力だと感じます。今後のさらなる発展に大いに期待しています。