CEOメッセージ

INVESTOR RELATIONS

“個客業”への変革で未来へ向かう
「百貨店」を越えて、次の100年の成長へ

取締役 代表執行役社長 CEO

細谷 敏幸

三越伊勢丹グループのミッション「こころ動かす、ひとの力で。」を、これからの時代において体現するには、既存の百貨店ビジネスモデルの転換が必要です。すなわち、不特定多数のお客さまをお待ちするだけの“館業”から、人とデジタルの力を駆使して個のマーケティングを行う“個客業”への変革です。
今年度から始まった中期経営計画において、私たちはその変革を本格化し、全てのステークホルダーに対して、経済価値、社会価値を持続的に提供し続けるグループへと進化してまいります。

紡いだ歴史の継承、未来への変革、“ひとの力”で挑戦を続けます

代表執行役社長CEOの細谷です。
まず、このたび当社に関心を持っていただき、この統合報告書を手に取っていただいたことに御礼を申し上げます。
2024年度、当社は過去最高となる営業利益763億円を達成し、2022年度から始まった中期経営計画期間を、当初計画を大幅に上回る業績で締めくくることができました。この統合報告書の冒頭に、私からは、当社がここに至るまでの道のりと、未来に向けて描いている成長ビジョンについてのお話をさせていただきたいと思います。

当社の歴史と“ひとの力”

当社は1673年、日本橋にて越後屋を創業したことをスタートに、350年以上の歴史を積み重ねてきた会社です。東京証券取引所のプライム市場に上場している約1,600社の中で300年以上続いている会社は10社ほどしかないと伺っています。このことからも、時代の変化の中でしなやかな変化を続け、今日に至っている当社の歴史の重みを感じていただけるのではないかと思います。

私たちの歴史の中で、これまでの最も大きな転換点は1904年の“デパートメントストア宣言”でした。その中では、それまでの呉服だけを扱う「呉服業」から、多様なものを扱う「百貨店業」への転換を行いました。時代の変化を捉えたこの大転換が、当社の今を支えているといって良いと思います。

三越と伊勢丹が統合した2008年以来、三越と伊勢丹がそれぞれの歴史の中で蓄積してきた経営資本や強みの融合を進めてきました。三越の「おもてなしの心」、伊勢丹が得意とする「マーチャンダイジングの発想力」が有機的に結合し、新たな時代に向かううえでの価値創造の基盤が整っています。2022年度には、全従業員が参加するかたちで企業理念体系の再整理を行い、「こころ動かす、ひとの力で。」という言葉を紡ぎ出しました。歴史や“のれん”への誇りのもと、従業員がこころを一つに、お客さまを幸せにするために真摯に行動できることは、当社の事業活動を特別なものにしている大きな要素であると考えています。

当社の強みとなる“ひとの力”をあえて言語化すると、「お客さまの声に寄り添い、感動的な解決をする力」「豊かな発想力で、革新的な提案をする力」「誠実さと倫理観で、ステークホルダーと信頼関係を築く力」だと思っています。おもてなしの心をもった従業員がお客さまの声に真摯に向き合い、期待を上回るレベルのソリューションをすること、お客さまご自身も気付かないようなニーズに革新的な提案をすること、その前提として、“のれん”を背負っている重みからくる“誠実さ”を有していること、これらは、どんなに外部環境が変わったとしても私たちの根幹として続いていくものです。そして、この“ひと”の強みを、“デジタル”の力で後押しする取り組みも進んでいます。業務改革DXによって、少数精鋭の従業員が「人にしかできない業務」に集中できるようになったり、AIを活用してお客さまのインサイトをより深く知ることができるようになったりしています。これらによって私たちの強みがより先鋭化され、誰にも模倣され得ない独自のビジネスモデルを作り上げていくことができるのです。

前中期経営計画の成果
科学の視点での事業構造改革

私が着任した2021年度に策定した前中期経営計画は、2022年度から2024年度の3ヶ年計画でした。コロナ禍の影響も残る2021年度の連結営業利益が59億円という状況の中、最終年度の2024年度の営業利益目標を350億円とする野心的な計画でしたが、結果としては763億円と、その2倍以上の実績となりました。前中期経営計画には、コロナ禍からのリオープンにより、海外のお客さまの売上高が急激に増加しました。コロナ禍前の営業利益300億円水準と、2024年度の営業利益763億円の差分約460億円のうちのおよそ150億円は、主に海外顧客の増加に起因するものであると分析しています。しかしそれを除く310億円は、私たちが全社一丸となって進めた事業構造改革と独自戦略の推進によるものだと自負しています。

収支構造改革による百貨店の再生は、長期にわたる成長の基盤をつくるうえで最も優先順位の高い取り組みでした。私の好きな言葉の一つに「感性と科学」があります。小売業においては当然“感性”も大事ですが、継続的に利益を上げ、ステークホルダーへの価値提供を続けるには、全ての面で“科学”することが重要です。お金の使い方、人の配置、場所の使い方、全ての構造を見える化し、根拠をもってコントロールする仕組みをつくってきました。これを“百貨店の科学”という冊子にまとめ上げ、全拠点に配布し、浸透を進めました。これを用い、全従業員が主体的、能動的に、科学の視点で効果・効率を考え抜いた結果、2024年度における国内百貨店の売上高損益分岐点比率は74%と、2018年度の90%から16ポイントの大幅改善となりました。“百貨店の科学”により、売上高の伸長が営業利益の拡大に劇的に結びつく構造をつくり上げたことが、763億円という過去最高益につながったのです。また、困難を伴う改革がこれだけ力強く進んだ背景には、当社従業員の豊かな発想力や、何事にも顧客視点で真摯に取り組む姿勢があったと思います。課題であったオンライン事業も、収支構造を科学することで、2024年度についに黒字化を果たしました。海外事業では、事業構造改革を進めるとともに、当社の小売の力をてこにエリアの価値を高める複合開発に参画する新たなビジネスモデルに挑戦しています。国内関連事業では、事業再編を進めるとともに、これまでの縦割り体制を脱し、横でつながってお客さまへの提供価値を高めていく“連邦活動体制”を確立しました。

前中期経営計画の成果「マスから個へ」の大転換

今、私たちは“館業”から“個客業”への変革の道を歩んでいます。
従来型の“館業”は、広くマス市場に宣伝をして館の中に不特定多数のお客さまにお越しいただき、お客さまがたまたま欲しいものがあってお買上げいただくような、“一期一会”のビジネスモデルです。このモデルは、現代のお客さまの購買行動とはミスマッチになってきています。今のお客さまは、ご自身で能動的に細かく検索をされてからご来店されます。その意思決定プロセスに店舗側がどれだけ入り込めるかが、ビジネスの成否を決める時代です。マスマーケティングから脱却し、お一人おひとりの「個」に向き合うビジネスモデルへの転換を進める必要があります。前中期経営計画で行った最大の変革は、まさに「マスから個へ」の大転換の一歩目を踏み出したことだといえます。

これは、冒頭で申し上げた“デパートメントストア宣言”に続く大きな変革だと思っています。私たちが目指す“個客業”とは、より多くのお客さまにお越しいただき、人とデジタルでつながり、そのお客さまのことを深く理解し、さまざまな接点でお役に立つことでつながりを深め、ウォレットシェアとライフタイムバリュー(LTV)の最大化を目指すビジネスモデルです。日本中、世界中のお客さまを惹きつけ、お一人おひとりの心の中深くまで入っていきたい。私たちの“ひとの力”にデジタルの力を加え、何に悩み、何を欲されているのかを考え抜きたいのです。そのために、既存の“エムアイカード”に加え、さまざまな情報をお届けできる“三越伊勢丹アプリ”を導入したことで、三越伊勢丹グループとつながる「識別顧客」の数は、2018年度末の332万人から2024年度末761万人へと大きく増加しました。伊勢丹新宿本店が4,000億円の大台を突破するなどの昨今の売上高の大幅な伸長は、この「識別顧客」との相互コミュニケーションの深化によるところが大きいと考えています。ここで一つ、データのお話をさせてください。お客さまを識別化することがいかに重要かというデータです。当社でお買い物をされる非識別のお客さまの年間購買額を1とします。それがアプリを持っていただくと2倍になります。エムアイカードを持っていただくと、フリーの時の3倍になります。アプリとカード両方を持っていただいたお客さまは、非識別のお客さまの10倍の購買額になるのです。エムアイカードが提供するのは主にポイントによる経済的なベネフィットです。一方アプリでは、そのお客さまに合った最適な情報・コミュニケーションという価値をご提供します。これらがお客さまと当社の結びつきを強くし、年間のお買上げ額拡大につながっているということになります。2025年3月にリリースした年会費無料の「エムアイカード ベーシック」により、つながるお客さまの数はさらに拡大しています。また、2025年3月には、新たに海外のお客さまのためのアプリ「MITSUKOSHI ISETAN JAPAN」の運用を開始しました。今後は世界をターゲットに「識別顧客」の数を増やし、国籍にかかわらず、お一人おひとりとのつながりを深めることが、私たちのビジネスの根幹になっていきます。

外部環境の認識

日本の経済はここ20~30年の間、停滞しています。小売業の市場規模も150兆円から170兆円の範囲で推移を続けています。その中でも、コンビニエンスストア、アウトレット、駅ビル、eコマースなど、百貨店を取り巻く競合環境は多様化し、厳しさを増しています。三越と伊勢丹が統合した2008年と比べると、現在の百貨店業界の市場規模は約78%と大きく縮小しています。当社は前中期経営計画の取り組みの成果もあり、2008年度対比で約91%と相対的に優位に推移していますが、時代の変化に対応し、自らを変え、進化させていく姿勢を続けなければ、生き残ることはできないという危機感を強くもっています。

訪日外国人は2024年に過去最高の3,686万人を記録し、2025年前半も前年を上回るペースで推移しており、増加の一途をたどっています。今後も、緩やかなインフレや訪日外国人の増加という流れは、中期的に継続していくものと認識しています。そしてより強く進んでいくのが、「消費の二極化」です。これには、いわゆる“富裕層の増加”という側面と、一人の消費者の中での二極化、いわゆる“メリハリ消費”が進むという側面があります。この二つの側面をいかに捉えられるかが、小売業の成長戦略において非常に重要な意味をもってくると考えています。私たちはこれを“高感度上質市場”と呼び、その市場を席巻する存在になりたいと考えています。どんなお客さまにも、“特別な瞬間”があります。それは月に一度のご褒美スイーツかもしれませんし、一年に一度、ラグジュアリーブランドのハンドバッグを買うことを楽しみにされているお客さまもいらっしゃいます。一生に一度と、高級機械式時計を買いに来られるお客さまもおられます。私たちは、これらの“特別な瞬間”に、必ず最初に想起される小売グループでありたいと思っています。また、国内人口の減少傾向が続く一方、世界の人口は拡大を続けています。モノやサービスに強いこだわりを持つ、日本の厳しいお客さまによって磨かれた当社の提供価値を、世界のお客さまに届けることを含めた成長戦略が求められていると考えています。

新・中期経営計画
個客業というビジネスモデル

2025年度から始まった新しい6ヶ年の中期経営計画では、フェーズⅠ最終年度の2027年度には営業利益850億円、フェーズⅡ最終年度の2030年度には1,000億~1,100億円を計画しています。これを達成するうえでの要諦は、グループ内の各社が連携し合う“連邦”を手段に、“個客業”への変革を進めることにあります。個客業のプロセスはシンプルです。「集客」→「識別化」→「利用拡大」→「生涯顧客化」という4ステップを磨き上げていきます。その中では、事業機会の拡大として、市場を世界に広げること、未活用の時間や空間を活用することを意識するとともに、グループの各事業が連携して新たな提供価値を生む“連邦”活動を進化させていきます。

個客業のステップは「集客」から始まります。その後のステップがどんなに素晴らしいものでも、初めに何らかの接点がないと次の「識別化」に進むことはできません。集客という視点では、やはり中核として輝く“百貨店”を磨き上げることが重要です。私たちは、世界に誇ることができる特別な店舗と“のれん”を持っています。その歴史、信用は、模倣されることがない唯一無二の経営資本です。そのうえで、お客さまのニーズに応える、または一歩先を行くような、独自性のある提案を続け、進化していきます。その際には、これまでの歴史のなかで蓄積してきた、世界のラグジュアリーブランドをはじめとするお取組先との強固な信頼関係が競争優位の源泉となります。特に新宿、日本橋、銀座の首都圏3店舗では、それぞれの店舗特性に合ったワクワクするような新しいコンテンツ・ゾーンの開発にしっかり投資をしていきたいと思っています。また、2030年度前後から開始する“まち化”では、ホテルなどの複合用途を百貨店と連携することを通じて、世界中からの来街者を呼び込むことが可能になると考えています。

「識別化」は“個客業”への変革において最も重要なステップです。集客した時点では不特定多数(≒マス)であったお客さまは、識別化することで初めて“個客”となります。「識別化」のステップは、直近で最も大きく進化をさせた部分です。2025年3月に、年会費無料の「エムアイカード ベーシック」と、海外のお客さまを対象とした多言語アプリ「MITSUKOSHI ISETAN JAPAN」を導入しました。つながるツールの幅が広がることで、お客さまのコンディションや国籍にかかわらず、三越伊勢丹グループのファンになっていただく機会を得ることができます。これまでは一期一会となっていた海外のお客さまも、今後は国内のお客さまと同様に識別化し、再来店や利用拡大につながるコミュニケーションを図っていけるようになります。2026年度以降には、上位カードや新しいポイント制度の導入を順次進め、あらゆるお客さまとつながることができる体制を整えていきます。なお、この「識別化」のステップでは、店舗で働く従業員の“ひとの力”が活きています。お客さまにカードやアプリにご入会いただく際には、“のれん”への信頼はもちろんですが、目の前で接客を担当した販売員への信頼が不可欠です。高い専門性とおもてなしの心を併せ持ったスタッフがいるからこそ、多くのお客さまが当社の「識別顧客」になってくださっているのだと思います。

一度「識別化」させていただければ、そこから「利用拡大」に向けたコミュニケーションが始まります。お客さまの声に寄り添う“ひとの力”に、デジタルの力が加わり、顕在・潜在のニーズに的確にヒットする情報提供ができるようになっています。海外のお客さまにも“ひとの力”を感じていただくため、海外外商組織もつくりました。また、グループ内の各事業と連携することで、新規金融サービスや高感度なツアー旅行など、百貨店で識別化したお客さまへの提供価値の幅が大きく広がりつつあります。また、地域百貨店のお客さまに首都圏百貨店の商品をご提案する“拠点ネットワーク”の取り組みも拡大しており、グループを挙げてご利用を拡大する体制が確立しつつあります。

「利用拡大」が進むと、その先には「生涯顧客化」があります。特別なつながりを実感していただけるご招待企画である「丹青会」や「逸品会」は、回を追うごとに売上高を伸ばしており、2025年2月の丹青会は単日46億円という過去最高の実績を収めることができました。また、通常百貨店では扱わない領域の商品やサービスをご提案し、お客さまの人生における“高感度上質”なシーンで必ずお役に立つことで、三越伊勢丹グループとつながり続けることの意義を感じていただくことを目指しています。

これらのステップをより高度なものにするために進めるのが“連邦”活動です。今までは百貨店が頂点で、その下にグループ会社がいるような構造でしたが、グループ内の全ての会社が全社横並びで連携して、お客さまへの提供価値の最大化に取り組むような体制にしていきます。それを具体化するための仕組みとして、今年度から「連邦収益管理表」というものを作りました。グループ内の各社が、それぞれ単独で、あるいは横連携をして、識別顧客に対してどれだけの価値を提供し、利益を生み出したかを可視化します。これによってグループ内全ての従業員の行動変容を、より力強く進めていきたいと思っています。

連邦活動の先にあるのは“まち化”です。私たちは、百貨店の周辺に多くの不動産を保有しています。“まち化”のなかでは、これらを新たな用途で再開発してバリューアップさせる。そのうえで、警備や清掃、システムや決済など、そこでのインフラ、コンテンツを自分たちで運営して利益化します。そして何よりその“まち”の魅力に引き寄せられる世界中のお客さまが、百貨店でお買物をしていただくことで、識別化されていきます。私たちの“個客業”の力を最大限発揮するための手段として、長期にわたる不動産開発を行っていく、私たちの“まち化”を楽しみにしていただきたいと思います。

直近の環境変化と“個客業”

昨今、ウクライナや中東における地政学リスク、アメリカを発端とする関税の問題、為替の変動など、国内外のお客さまの購買心理に影響を及ぼす事象が多く発生しています。当然、小売業である当社も一定の影響を免れるものではありません。しかし、このような時こそ、“館業”から“個客業”への変革を進める当社の強さが発揮されると思っています。小売業の売上高は、「客数×客単価×購買頻度」で構成されます。市況が悪くなった際、これまでの“館業”では、マスへの宣伝費を増やし、バーゲンセールで粗利益率を削って耐えしのぐしかありませんでした。結果として“のれん”の価値も毀損し、負のスパイラルに陥ります。これに対し、“個客業”においては、1対1でつながったお客さまに対して、来店動機のきっかけになる情報を提供したり、ニーズに合う提案でより高付加価値な商品をお買上げいただいたり、オンラインも含め、接点の頻度を増やすような相互コミュニケーションを行ったりと、全ての項目に対する「打ち手」があります。市況が不安定な時こそ、“個客業”の相対的な強さが発揮されるものと考えています。

株主還元について

“館業”を続けてきた当社はこれまで、外部環境に左右されて利益水準が安定せず、十分な水準の株主還元を行うことができていませんでした。安定配当の名のもと、年間の配当も長らく12円前後で推移してきたのです。その結果、ROEは低水準で、しかも安定しない状態が続いていました。これからの当社は、これまで述べてきた“個客業”への変革を通じ、外部環境変化に左右されにくいビジネスモデルで、安定的な利益成長を続けていきます。その自信を数字で表したのが、新たな株主還元方針です。“個客業”への変革を進める2027年度までのフェーズⅠでは3ヶ年計の総還元性向70%以上、配当については2025年度の予想を60円とし、新中期経営計画期間中(2030年度まで)の累進配当方針を開示しました。今後も株主資本コストを意識し、利益成長とともに株主還元を強化することで資本の部をコントロールし、ROEが安定的に10%を超える状態を早期に構築していきます。

長期的な成長へ
ビジネスモデルの拡がり

先ほどは“個客業”の4ステップをご説明させていただきましたが、私が長期で見据えているのは、識別顧客のデータを活用したビジネスモデルの拡がりです。2030年度までの中期経営計画では、“個客業”の4ステップを磨き上げることで1,000億円超の営業利益を目指します。その先では“まち化”を通じた圧倒的な集客による百貨店のさらなる成長と連邦利益が上乗せされてくるでしょう。さらにその頃当社には、世界中の個客のデータが集まっているはずです。ただの“顧客情報”ではなく世界の富裕層を中心にした、“高感度で上質な”消費を志向する百貨店好きのお客さまの情報です。しかも、情報だけにとどまらず、当社の“ひと”がつながってコミュニケーションを取れる状態がセットになっています。私たちはその両方を活用して、お客さまに“非日常の体験価値”をご提供し続けます。また、これらのデータにより、これまでは小売業としてのリターンにしか反映されなかった“お客さまに寄り添いインサイトに入り込む力”が、中長期では、BtoBも含め、想像もつかないような事業の拡がりにつながる未来を感じています。

長期的な成長へ
ひとの力に由来する強みを磨き続ける

当社はマテリアリティとして、「ひとの力の最大化」「人・地域をつなぐ」「持続可能な環境・社会をつなぐ」「グループガバナンス・コミュニケーション」の4つを掲げています。特に「ひとの力の最大化」が、中期経営計画を推進していくうえでの根幹をなすものであることは、これまで述べてきたことからもご理解いただけると思います。従業員が心身ともに健康で、年齢や性別などの属性に左右されずに活躍の機会を与えられることは大前提です。基盤としての健康経営の推進、ならびに、2022年度に発信した、グループ労働組合との共同宣言「安心して働くことのできる職場環境づくり」に実効性を持たせる取り組みを、継続して進めていきます。そのうえで、企業としての成長ストーリーに共感し、そのために自身がやりたいことをもち、そのためのスキルを獲得しながらキャリアを構築していってほしいと思っています。本人の想いを受け止め、支援する上司のマネジメントの重要性も相対的に高まっています。2024年度には、“三越伊勢丹人財マネジメントガイドブック”を発行し、組織や部下の成長を支える上司のマネジメントを支援する体制を整えました。私自身、着任以来続けている従業員との対話会は、2021年度から2024年度までで延べ222回、357時間、3,884名に上りました。一人ひとりと向き合い、戦略への共感、働くうえでの疑問の解消などに努めています。取締役会においては、多様な専門性をもった社外取締役が財務・非財務面での進捗をモニタリングするとともに、執行側も含めて、“個客業”への変革に向けた活発な議論を行っています。“ひとの力”を最大限引き出し、“働きやすさ”と“働きがい”が高次に両立する組織をつくることが、個客業としての利益成長に直結することを経営として強く意識しています。

当社の“ファン”になっていただきたい

最後になりますが、私は、“個客業”を追求する先には“ひと”が“ひと”を幸せにする世界があると思っています。どんなに科学技術が発展するなかでも、“ひと”が幸せを感じるのは“ひと”との接点でしかありません。「こころ動かす、ひとの力で。」というミッションを掲げる当社にはそのことを証明し続ける使命があると思います。その使命を果たすためには、お客さま、お取組先、従業員、地域社会、そして株主・投資家の皆さまの応援が欠かせません。今後とも、ステークホルダーの皆さまと積極的に対話し、当社グループの“ファン”になっていただき、長期にわたる絆を深めてまいりたいと思っています。そのうえで、執行役全員で従業員を導き、企業価値の向上に邁進してまいります。これからの三越伊勢丹グループの進化・成長と、社会への貢献にご期待いただくとともに、引き続きのご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

取締役 代表執行役社長 CEO
細谷 敏幸

(写真左より)
執行役常務 CMO
山下 卓也
取締役 執行役常務 CFO
牧野 欣功
取締役 代表執行役社長 CEO
細谷 敏幸
執行役常務 CAO 兼 CRO
金原 章