古今 KOKON vol.2 年の瀬・新年、奥様は忙しい…!

12月25日クリスマスの集い家族で集まり、おいしいごちそうをいただくひととき。奥様は、みんなにふるまう料理づくりに奮闘します。 「梅子さん、次は棚から大皿を出してちょうだい」今日は夫の両親を招いて、毎年恒例のクリスマスの集い。その支度のため、私は台所で自慢の料理をお手伝いの梅子さんと手早く盛り付けている。義父はかなりの食道楽である。有名料亭や西洋料理店にも顔がきくほどだから、料理には手を抜けないのだ。やがて、子どもたちへの贈り物を両手に、夫の両親がやって来た。すかさず、十二歳になる娘の丹子が、弟・越太郎の手を引いて、笑顔で二人を迎えた。

テーブルにつくと、今日の料理の主役である鶏のソテーが運ばれた。義父はじっと皿を見つめてからナイフとフォークで器用に取り分け、口に運んだ。そしてひと言、「うむ、なかなかよろしい」ほっとする私の横で、丹子は自分が飾り付けたクリスマスツリーを義母にほめられて、たいそうはにかんでいた。12月26日 迎春のしつらえ お正月の準備が慌ただしく始まります。奥様は、正月に使う食器類を揃えます。 クリスマスが終わると、息つく間もなく、翌日から正月の準備が始まる。梅子さんには、家の大掃除を頼み、私は丹子と正月用の うつわや屠蘇器 を取りに、裏庭の土蔵へ向かった。大きな食器棚に並ぶ数々のうつわを手に取ると、「さぁ賑やかで忙しい正月が来るぞ」と身の引き締まる思いがする。うつわを蔵から出し終えると、「お花のうつわ、忘れてない?」と丹子が聞いてきた。そうだった、 床の間 を飾る花器も準備しなくては。私は、年々頼もしくなる娘に目を細めた。

12月27日 年の瀬のお買い物 お正月に向けて、必要なものがたくさん。奥様は、子どもたちと買物へ出かけます。次の日は、丹子と越太郎を連れ、年末で賑わう日本橋へ買物に出かけた。小説家である夫は、暮れも押し迫っているというのに締切があるからと、ひとり書斎へこもっている。元日に着る衣類、料理の具材、お酒、お世話になっている方々へのお年賀など、買わなければならないものは山ほどある。店の中を次から次へと巡り、テキパキと買い揃えていく。ひとしきり買い終えて、店の出口へ向かおうとすると、「お母様、何か忘れてない?」と、丹子が私の手を引く。「なんだったかしら?」振り向くと、「羽子板買ってくれるって言ったじゃない」と丹子がふくれた。「僕も凧ほしい!お父さんと上げるんだ」脇から越太郎も言う。ああ、私としたことが、すっかり忘れていた…。丹子に引っ張られるようにして、私は売場へ引き返した。

1月1日 新年の始まり 次から次へ訪れる、年賀のお客さま。接待し終えて、ほっとひと息つく奥様でしたが… 慌ただしい年の瀬が過ぎ、いよいよ、最も忙しい元日がやって来た。家族みんなが、私の用意した 新しい着物と帯、足袋を身につけて居間に集まり、正座して「明けましておめでとうございます」と挨拶をする。それが終わると、子どもたちに御年玉を渡すのが我が家の決まりだ。子どもたちの目が、きらきら輝いている。しかしそのとき、例年より早く年賀の来客があった。その後は、堰を切ったようにお客さまが訪れ、夫はお客さまの相手に、私と梅子さんはお膳やお酒を出すのにてんてこ舞いとなった。 ようやく一段落ついた夕方、私は梅子さんに「ほんの気持ちだけど、どうぞ受け取って」と御年玉を渡した。すると後ろから、「お母様、何か忘れてない?」と丹子。その目は、私が梅子さんに手渡そうとしている御年玉をじっと見つめている。「 ……あ!」

今も昔も、お正月は一大イベント。大正〜昭和初期にかけて三越ではどのような商品をご提供していたのか、また、当時の女性がどのような年末年始を過ごしていたかを物語を通じてご紹介します。
時代を超えて受け継がれ、さらに人気の高まる盆栽
お正月の盆栽として定番の「黒松」お正月にぴったりな、小サイズの松の盆栽
おすすめします。ウイスキーの新しい楽しみ方お正月の床の間に飾る盆栽としては、松や紅白梅が昔からの定番です。最近は床の間のないお宅も多いので、テーブルやチェストの上などに置ける小さいものも人気が高まっています。盆栽初心者の方には、季節を問わず寄せ植えやコケ玉など、かわいらしいものも人気です。これらの盆栽は、一日中外に出す必要はありませんが、日光や風にあてることで季節に応じた変化をより楽しめるようになります。また、そのような“季節や成長によって変化するアート”という側面から、近年、盆栽は海外でも非常に人気が高まっています。実際に当店でも、毎日のように海外のお客さまにご来店いただいています。盆栽を見て、そこから“さまざまな風景を想像すること”こそ、時代を超えて受け継がれてきた盆栽の魅力だと思います。今後は、その魅力を残しつつも、例えば一日中室内で育てられる盆栽など、人々のライフスタイルの変化に合わせて盆栽も進化していくことが求められると考えています。

三越はじめて物語 日本で初めて三越が行った取り組みをご紹介します。

左:包装紙「華ひらく」、右:猪熊弦一郎氏による原画
1950年 オリジナル包装紙デザイン このデザインは、1950年(昭和25年)に、常に自由な表現に挑みつづけていた洋画家・猪熊弦一郎氏によって生み出されたものです。モチーフとなったのは、海岸に転がっていた石のフォルム。「波にも負けずに頑固で強く」という発想を原点にしながら、自然がもたらす造形の美しさが表現されています。「華ひらく」というタイトルは、百貨店としての三越が、いろいろな商品を扱う「百花ひらく」という想いからともいわれています。
 
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